2020年8月15日『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring song』が公開されました!
待ちに待ったHeaven's Feelの完結であり、聖杯戦争の終結。
桜は一体どうなってしまうのか、聖杯戦争の真の目的とは。
ネタバレ込みで語りたいシーンをピックアップして語るので、映画未視聴の方はお気を付けください。
自分は原作ゲームをプレイしておらず、FGOもプレイしていないので、アニメの『Fateシリーズ』のみを追いかけてきた人の視点として、優しく見ていただけると幸いです。
『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring song』とは
劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅲ.spring song 予告編│2020年4月25日公開
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC ©TYPE-MOON
あらすじ
「俺は、桜にとっての正義の味方になるって決めたから」
少年は、真実からもう目を逸らさない。
少女を救うために。自分の選んだ正義を貫くために。魔術師〈マスター〉と英霊〈サーヴァント〉が
万能の願望機「聖杯」をめぐり戦う――「聖杯戦争」。
その戦いは歪んでいた。ひとりの少女――間桐 桜は犯した罪と共に、昏い闇に溺れてしまった。
桜を守ると誓った少年・衛宮士郎は遠坂 凛と共闘し、
「聖杯戦争」を終わらせるため、過酷な戦いに身を投じる。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは闘争の真実を知る者として、
その運命と向き合い、間桐臓硯は桜を利用して己が悲願を叶えようとする。「だから──歯をくいしばれ、桜」
激しい風に抗い、運命に挑む少年の願いは、少女に届くのか。
終局を迎える「聖杯戦争」──。
最後の戦いが、遂に幕を上げる。引用元:『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring song』公式HP STORYより
スタッフ
原作:奈須きのこ/TYPE-MOON
キャラクター原案:武内崇
監督:須藤友徳
キャラクターデザイン:須藤友徳・碇谷敦・田畑壽之
脚本:桧山彬(ufotable)
美術監督:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:松岡美佳
編集:神野学
音楽:梶浦由記
主題歌:Aimer
制作プロデューサー:近藤光
アニメーション制作:ufotable
配給:アニプレックス
キャスト
衛宮士郎:杉山紀彰
間桐 桜:下屋則子
セイバーオルタ:川澄綾子
遠坂 凛:植田佳奈
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン:門脇舞以
藤村大河:伊藤美紀
言峰綺礼:中田譲治
間桐臓硯:津嘉山正種
ライダー:浅川悠
真アサシン:稲田徹
ピックアップポイント
言峰綺礼と衛宮切嗣の対比
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イリヤを桜に連れていかれ、綺礼が運転する車に乗ってアインツベルン城に向かう道中。
綺礼が士郎に対し、自分と切嗣の違いを話すシーンは非常に印象的でした。
愛情や友情を尊び、自分も他人も愛する切嗣。
愛情や友情とは縁遠く、誰も愛することのできない綺礼。
万人が美しいと感じることに幸福を感じる切嗣。
万人が醜いと感じることに幸福を感じる綺礼。
同じ冷徹な性格を持ち合わせながらも、全く生き方が異なる二人。
『Fate/Zero』が大好きな自分にとっては 第24話の熱い戦闘シーンを思い出さずにはいられません。
善とは何か、悪とは何か。
人によって幸福の価値観は違う。
終始描かれるこのテーマが、もう既に車内の会話で出ていたんだなあと最後まで見終えてハッとさせられます。
「自分以外のことのために自分を犠牲にするな!」
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アインツベルン城のイリヤがいる部屋への突入に成功するも、歓迎する様子のないイリヤ。
イリヤは器としての自分の人生を既に諦めており、
"自分が犠牲になることで他人が救われるなら…"
と考えていました。
そんなイリヤに対し、士郎が放った一言。
「自分以外のことのために自分を犠牲にするな!」
自己犠牲の鬼、自己犠牲が生きがいの士郎が言うからこそ、非常に重たい言葉でした。
自己犠牲とはまさに無償の愛。
凛にとっての桜、イリヤにとっての士郎、本作ではたくさんの自己犠牲・無償の愛・家族愛が描かれました。
そして対比されるように描かれるのが、他者のため犠牲にさせられた桜とこの世全ての悪であるアンリマユ。
"自己犠牲こそが至高"ではない。
その人が犠牲になることで救われる人もいれば、救われない人・悲しむ人もいる。
生きていくうえで、"何のために"、"何を選択すべきなのか"、見終わった今も非常に考えさせられる内容です。
言峰綺礼の過去
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イリヤを救い出した後、綺礼は士郎に対し、
「助けた者が女なら殺すな。目の前で死なれるのは、中々に応えるぞ。」
と告げます。
綺礼がそんな善人みたいな発言をするのか…という圧倒的な違和感の後、対アサシン戦で綺礼の過去が描かれます。
人が幸福と感じるものを幸福と感じられない綺礼が、もしかしたら人を愛することが出来れば幸福になれるかもしれないと一縷の望みをかけ、一緒に過ごしたクラウディアという女性。
クラウディアは、自分が死ぬことで綺礼が生きる意味を見出してくれるかもしれないと自害。
涙を流す綺礼でしたが、その涙は悲しみの涙ではなく、
「どうせ死ぬならば自分の手で殺したかった」
という感情だったのです。
綺礼の人間性が端的に表れたエピソード。
『Fate/Zero』でもクラウディアの名前だけは聴いていた気がしたので、点と点が繋がって線になるような感覚でした。
素直に"綺礼はクラウディアを愛していなかった"と解釈するか、
この感情こそが"綺礼の歪んだクラウディアへの愛情だった"と解釈するかは難しいところ。
どちらにせよ、この話で綺礼の異常性がしっかり描かれたからこそ綺礼と士郎の最終戦の良さが際立ったなあと思います。
士郎 vs. バーサーカー
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鳥肌と目頭の熱さが抑えきれないのが、アーチャー・エミヤの左腕を使うシーン。
イリヤを追って迫りくるバーサーカー。
一度でもアーチャーの腕の力を開放すれば士郎の肉体は崩壊するという土壇場の場面。
士郎を心配するイリヤでしたが、
「一度でもお兄ちゃんなんて呼ばれたら、兄貴なんだ。」
とバーサーカーと対峙する士郎。
左腕を使おうとする士郎に呼び掛けるエミヤ。
「ついて来れるか?」
「ついて来れるか、じゃねえ。てめえの方こそ、ついてきやがれ!」
エミヤを追いかけていた士郎がエミヤに追いつき、追い抜き、バーサーカーへ向かう演出はかっこ良すぎて本当に痺れました。
バーサーカーの宝具をコピーし、
『是・射殺す百頭(ナインライブズ・ブレイドワークス)』
を放つ士郎。
あの士郎がまさかバーサーカーを倒すとは…
少しだけ描かれたバーサーカー・ヘラクレスの過去の描写。
「お前が守れ…」
と言い残し消えていくバーサーカーの姿からはイリヤへの強い想いを感じ取れ、
ここでもまた胸が熱くなってしまいました。
ライダー&士郎 vs. セイバーオルタ
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本作の戦闘シーン最大の見せ場。
戦闘に入る前の士郎がセイバーオルタに放った一言がまず衝撃的。
「桜を助ける為に、お前は邪魔だ。」
Heaven's Feelを描く前にセイバールートをしっかりと描いたからこそ、士郎がセイバーに対して"邪魔だ"なんていう日が来るとは夢にも思いませんでした。
そして熱すぎる戦闘シーン。
アニメ以外のコンテンツにもしっかり触れている人にはわからない気持ちかもしれませんが、Heaven's Feelを見るまで、
ライダー?ああ、そんな人いたね。
ぐらいの気持ちだった自分。
第一章、第二章と見るたび好きになり、第三章で完全に大好きなキャラクターになりました。
鎖を使っての立体的な戦闘と、魔眼を使っての戦術的な立ち回り。
洞窟内ということも相まって、崩落する石を使いこなし、スピードで翻弄しながら戦うライダー。
めちゃくちゃ石も立方体に崩壊するように描かれていて作画の見所が多すぎる。
『Fate/Zero』の頃からお馴染み、スーパーアニメーター・阿部望さんもクレジットされており、
誰がどこのカットを担当しているのか情報が集まるのが楽しみです。
ライダーの紫のエフェクトと、セイバーオルタの赤・黒のエフェクトも非常に美しく、1秒たりとも目が離せない戦闘が2分以上続くとんでもないシーンでした。
決め手となったのは士郎とライダーの連携。
約束された勝利の剣(エクスカリバー)を熾天覆う七つの円環(ローアイアス)で受け、その隙に騎英の手綱(ベルレフォーン)で致命傷を与え、士郎がとどめを刺す。
目まぐるしい戦闘作画の中でもしっかりと戦略が伝わってきました。
自我を取り戻した様子のセイバーにも容赦なくとどめを刺した、士郎の覚悟もめちゃくちゃ熱かったです。
映像化不可能と言われていた所以の一つはここだったんだなと感じる一方、この戦闘を見事に映像化させたスタッフの皆様方が素晴らしすぎる。
凛 vs. 桜
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戦闘描写と言うよりも、桜の心理描写が見事だったこの戦い。
誰よりも強くなったと思い込んでいた桜の攻撃を難なくしのぐ凛。
やっと自分が凜より優れているところが出来たと思ったのに、また自分にないものをもっている凛に憤慨します。
最悪な幼少時代から、ただ士郎の側にいられれば幸せだと感じるようになった桜。
色々な経験や色々な感情を得たことでどんどんと執着が増えていって、嫉妬の気持ちが膨らんでいってしまったんだなと非常に複雑な気持ちになりました。
何が幸せかはその人次第。
どこまでも多くのものを求め続ける限り、永遠に幸せにはなれない。
これはちょっと感じ方次第でもありますが、ここの描写はエンディングともつながっているのかなと思いました。
姉としての凛から桜への想いもまた尊い。
性格上素直になれない凜ですが、桜を心配に想い、かけがえのない存在なんだと考える気持ちはひしひしと伝わってきました。
先ほどのライダー&士郎 vs. セイバーオルタと比較するとまさに魔術の応酬と言った感じの戦闘で、凜が使う宝石剣ゼルレッチのカラフルなエフェクトも相まって、非常に幻想的な戦闘描写になっていました。
士郎 vs. 綺礼
大聖杯の起動ひいてはアンリマユ召喚の成否のため、最終決戦をする2人。
まさか綺礼の服の下があんなにマッチョだったとは…
剣での戦い、魔法での戦いと続き最後は拳と拳のぶつかり合い。
自分を勘定に入れず他人の幸福のみを考える後天的異常者・衛宮士郎。
物心ついた頃から悪を好んだ先天的異常者・言峰綺礼。
この作品の善と悪、それぞれの象徴ともいえる二人の殴り合いは、聖杯戦争を終わらせるにふさわしい熾烈な戦いとなりました。
この世全ての悪であるアンリマユが召喚されれば、一切の悪意なく全人類が滅ぼされる。
その時、アンリマユは自身を悪だとを想うのか、その興味のために何が何でもアンリマユの召喚を目論む綺礼。
結局、善悪なんて個人の尺度でしかなく、それに基づいた幸福・不幸もまた、個人の尺度でしかない。
人は善も悪も、矛盾したどちらの気持ちも抱いて生きていくものなんだ。
ただの勧善懲悪なお話ではない、非常に深いメッセージ性を感じる二人の戦闘でした。
士郎と桜、また再び迎えることのできた新しい春
アーチャーの腕の力を使い、肉体が完全に滅んでしまった士郎。
士郎の帰りを待ちながら世界を旅する凛と桜が出会ったのは、『空の境界』の蒼崎橙子さんであるとわかる後ろ姿。
残っていた魂を橙子が作った人形に移し替え、士郎は身体を取り戻します。
しかし、ここで疑問が。
肉体が別物の士郎は本当に士郎なのか?
この疑問に対する自分の解答は、
・肉体を得てからの士郎が「桜」しか言葉を発していないこと。
・凜に幸せかどうか聞かれた桜が含みを持たせて「幸せです」と答えたこと。
・桜が「罪の意識で潰れることは逃げること」と言っていたこと。
これらのことから、士郎は元の士郎ではないけれど、その士郎と一緒にいるという選択をしたことが桜にとっての幸せだったのではないかと考えています。
桜は自分の罪の意識・黒い部分を抱えながら、元の士郎とは同じではない士郎と人生を歩んでいく。
他人から見たらハッピーエンドかどうかはわからないけれど、桜にとってはハッピーエンドだった。
シンプルに良い話だったね~では終わらせない、『Fate/stay night』の最後を飾るのにふさわしい終わり方だったなと、改めて凄い作品に出会えたことに感謝しています。
「春はゆく」
Aimer 『春はゆく』MUSIC VIDEO(主演:浜辺美波・劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring song主題歌/FULL ver.)
歌:Aimer 作詞・作・編曲:梶浦由記
第1章の「花の唄」、第2章の「I beg you」から引き続きAimerさんと梶浦由記さんコンビが主題歌を担当。
士郎と桜が共に新しい春を迎え、一緒にお花見に行くシーンから流れ始めるこの楽曲。
贅沢を言うなら、やっぱり春に映画で聴きたかったなというところ。
制作に携わるスタッフももちろん、自分以外の視聴者もみんなきっとどこか心の中でそう思ったことでしょう。
春・桜を想起させるちょっと和風なテイストを出しつつ、Aimerさんのボーカルを最大限に引き立たせることが考えられた楽曲。
「I beg you」のような激しさはなく、これからの桜の人生と共に歩んでいくような、一音一音非常に丁寧に紡がれた音作りがされているなあと感じました。
そしてやっぱりAimerさんのボーカルは凄い。
今にも消えてしまいそうな儚さと、強い意志が共存した本当に不思議なお声です。
寂しさも、嬉しさも、後ろ向きな気持ちも、前向きな気持ちも。
罪の意識を抱えて生きていく桜にこんなにぴったりな主題歌があるでしょうか。
歌詞の意味・解釈について少し考えていきましょう。
しんしんと降り積もる時の中
よろこびもくるしみもひとしく
二人の手のひらで溶けて行く
微笑みも贖いも
あなたの側で
出典:「春はゆく」/ Aimer
冬や雪と言うワードを使わずとも、新しい春が来て士郎と共に生きていく桜の姿が思い浮かぶ1番サビの歌詞。
雪が解ける様子は幸福を示す言葉として使われますが、
"くるしみ"、"贖い"という強い言葉があり、桜の複雑な心境・人生を物語っているようです。
プラスとマイナスのバランスが本当に絶妙な言葉選びが素敵すぎる。
罪も愛も顧みず春は逝く
輝きはただ空に眩しく
私を許さないでいてくれる
壊れたい、生まれたい
あなたの側で
出典:「春はゆく」/ Aimer
今度は春がゆき、夏の訪れを感じられる2番サビの歌詞。
夏の太陽の輝きを見たところから繋がる、"私を許さないでいてくれる"という重たいワード。
どれだけ桜の心境と真剣に向き合えば出てくる言葉なんでしょうか。
その後に続く言葉も、士郎への深い愛情を感じます。
時は過ぎ、季節は巡っても罪の意識を抱えながら生きていく。
桜が背負った深い業と、それでも前に進んでいく強さ。
桜の木の下には死体が埋まっていて、死体の血を吸って桜は美しく咲き、儚く散るなんてことも言われます。
桜ほどではないにしても、人は誰でも犯した過ち・悲しい過去を背負いながら、それでも前に進んでいかなければなりません。
作品にどこまでも寄り添った楽曲であることはもちろん、作品を知らない人が聴いても感動してしまう普遍性がある素晴らしい楽曲です。
おわりに
『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring song』を見終わって、色々な感情が芽生えたものをそのまま文字に起こすような形になりました。
自分の勉強不足もありますので、
「ここは間違ってるよ!」
「ここはこういう解釈が正しいよ!」
というところがあればコメントやリプライなどで教えていただけると幸いです。
また、この記事には記載のない、感動したポイントなどあれば、それもコメントいただければと思います。
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今後もアニメに関する記事を毎日投稿していきますので、ぜひご覧ください。
また次の記事で!