執着。
何か一つのものを好きになってしまうと、それに依存し続けてしまう人間の本能とも言える、人間の非常に難しい部分です。
それは良い方向に繋がることもあれば悪い方向に繋がることも。
ということで今回は、大筋のストーリーが大きく進展しつつ、一人の女の子の心情描写をとことん丁寧に描いた、2020年を代表する30分、
第11話「みんなの夢、私の夢」について語っていきたいと思います。
『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』とは
TVアニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」PV ロングVer.
あらすじ
東京・お台場にある、自由な校風と専攻の多様さで人気の高校「虹ヶ咲学園」。
スクールアイドルの魅力にときめいた普通科2年の高咲侑は、
幼馴染の上原歩夢とともに「スクールアイドル同好会」の門を叩く。時にライバルとして、時に仲間として、
それぞれの想いを胸に日々活動するメンバーたち。「夢を追いかけている人を応援できたら……。」
9人と1人の少女たちが紡ぐ、初めての「みんなで叶える物語スクールアイドルプロジェクト」。
届け!ときめき――。
いままた夢を、追いかけていこう!
スタッフ
原作:矢立肇
原案:公野櫻子『シスター・プリンセス』『Strawberry Panic!』
監督:河村智之『三ツ星カラーズ』
シリーズ構成:田中仁『あんハピ♪』『ゆるキャン△』『八月のシンデレラナイン』
キャラクターデザイン:横田拓己『三ツ星カラーズ』『波よ聞いてくれ』『戦翼のシグルドリーヴァ』
デザインワークス:めばち『推しが武道館いってくれたら死ぬ』
美術監督:西倉力
セットデザイン:片岡一巳
色彩設計:赤間三佐子
CGディレクター:飯沼佑樹
撮影監督:杉山大樹
編集:小口理菜
音響監督:長崎行男
音楽:遠藤ナオキ
音楽制作:ランティス、サンライズミュージック
アニメーション制作:サンライズ
製作:2020 プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会、サンライズ、バンダイナムコアーツ、ブシロード、KADOKAWA、アスキー・メディアワークス
キャスト
高咲 侑:矢野妃菜喜
上原歩夢:大西亜玖璃
中須かすみ:相良茉優
桜坂しずく:前田佳織里
朝香果林:久保田未夢
宮下 愛:村上奈津実
近江彼方:鬼頭明里
優木せつ菜:楠木ともり
エマ・ヴェルデ:指出毬亜
天王寺璃奈:田中ちえ美
第11話「みんなの夢、私の夢」
あらすじ
スクールアイドルフェスティバル開催に向けて動き出す同好会。
しかし、生徒会へ提案するものの簡単にはいかない。
申請書の見直し、会場の下見、パフォーマンスの練習とやることはいくらでもある。
東雲学院や藤黄学園も巻き込んで、ホームページを作成したり、投書箱を設置して広く意見を取り入れようとしたりと奔走するが、一番の課題は会場が一向に決まらないことだった。
やりたいことはバラバラ、だけど1つに絞らなければいけない。
みんなの願いを叶えたい侑は思い悩んでいた。
スタッフ
脚本:平林佐和子
絵コンテ・演出:伊礼えり
作画監督:市原圭子、伊礼えり、尾尻進矢、北島勇樹、木村文香、鐘文山、舘崎大、冨吉幸希、山内尚樹
総作画監督:横田拓己、冨岡寛、渡邊敬介
ピックアップポイント
スクールアイドルフェスティバルの申請を生徒会にするも許可されず
スクールアイドル同好会のみんなが輝けるステージとして、スクールアイドルフェスティバルの申請に行く侑とかすみん。
生徒会長を有する同好会なので、簡単に申請が通るかと思いきや、内容が漠然とし過ぎていると却下。
どこの学校と合同で行うのか、具体的な行動予定や進捗状況、そして開催地は申請には欠かせない内容。
もっともっと申請書を詰めていく必要がありそうです。
生徒会メンバーが一人一人可愛らしいのはもちろん、せつ菜の正体がいつバレるのかというヒヤヒヤ感もあって、生徒会室でのシーンは個人的にも特に好きなシーンです。
「みんなの夢、私の夢」
既に前話までに伏線は十分に張られていますが、さらに不安を煽るのがこのサブタイトルと色。
これまでのサブタイトル表記は全ての文字に色が付くことはありましたが、一部にのみ色が付くのは初めて。
『蒼穹のファフナー』ファンであれば、死人が出てもおかしくないというところまで想像が膨らんでしまいます。
結果的に死人は出ないのですが、みんなの夢と、ピンク色の私の夢が対立関係にあるというのは大きなポイントの一つです。
協力を優しく断られる歩夢
申請書を詰めていくうえで、まだまだ課題は盛りだくさん。
普段のせつ菜であれば、企画段階でもっと内容を煮詰めていてもおかしくない気がしますが、「気持ちがはやっていて…」という可愛い一面も。
歩夢も自分に何かできることがあれば手伝うと提言しますが、フェスの練習で大変だろうからと断られてしまいます。
お互いのことを想い合っているからこそのすれ違い。
この段階で歩夢は既に自分の無力感に苛まれていたのかもしれません。
開催地決定のための下見
大ホールやジョイポリスのステージ、屋外ステージ、ヴィーナスフォートのステージ、フェスティバル広場など開催地決定のため各所を回る同好会一行。
今までの素晴らしいステージを思い出させてくれる背景にエモーショナルな思いです。
お客さんとの距離が近い方がいい、自然の中がいい、街中で歌ってみたいなど意見はバラバラ。
良い意味で非常に個性的なメンバーですが、会場決めは難航する予感。
東雲学院と藤黄学園も前向きに検討
4対4での合同ライブの打ち合わせ。
第9話で「ダイバーフェス」の話を持ってきた姫乃と果林の邂逅。
姫乃が果林のファンであることを知り大人なサービスをするこんなカットも。
東雲学院と藤黄学園も、スクールアイドルフェスティバルの志に共感し前向きに検討するとのこと。
他校との合同という話もこれでひとまず決着がつきそうです。
この打ち合わせに歩夢を呼んでも良いのではないかという気がしますが、侑はもちろんのこと、知名度のあるせつ菜、「ダイバーフェス」で繋がりのある果林、妹も同席するということで彼方という3人を考えると席の空きは無し。
侑とせつ菜が同席しているということもあって、より一層歩夢の無力感、嫉妬心が強くなってしまったことでしょう。
侑の雀荘ポーズ
自分が第11話を見る前にTwitterで回ってくるほど話題になっていた雀荘ポーズ。
長考するとき確かにこういうポーズをよく見かける気がします。
口元の手の当て方はもちろんのこと、左手を付いて肘を張っているのがよりそれっぽく見えますね。
かすみんBOX、お便り0
ファンの声に耳を傾けるため、ライブへの希望を募集したかすみんBOXを置いていたかすみん。
夏休み期間中で登校している人が少ないということもあり、かすみんBOXへのお便りは0。
侑に慰めてもらう1シーンですが、ここでも歩夢の意味深なカット。
かすみんBOXの話に入る前に侑から歩夢に会場のアドバイスを求めていましたが、そこに食い気味でかすみんが入ってきたこともあって、モヤモヤした感情は募る一方。
段階を踏んでいく歩夢の心理描写はお見事としか言いようがありません。
かすみんBOX、魔改造
お便りは0だったものの、アイデアは素晴らしかった、かすみんBOX。
愛の提案で、かすみんBOXは魔改造され、より多くの人の意見を集めることに。
うざかわいじられキャラだけれど、非常に愛らしいキャラクターです。
一連の流れを見た璃奈は、より多くの人にスクールアイドルフェスティバルを知らせるために手を打つことに。
璃奈の成長
スクールアイドルフェスティバルのホームページ作成中、焼き菓子同好会のメンバーが璃奈に会いに。
璃奈の活躍を楽しみにする友人たちに、より一層彼女たちの仲が深まったことを感じます。
璃奈も自分の熱い思いをぶつけ、璃奈ちゃんボードで気持ちもしっかり伝えました。
周りへの気配りはもちろん、自分の好きをしっかり持っている璃奈は作中で最も成長したキャラクターだなとしみじみする想いです。
不安が募る歩夢
侑に声をかけようとする歩夢ですが、最近の侑はせつ菜と一緒にいてばかり。
歩夢の不安は、どんどんと募る一方。
第1話で買ったお揃いのパスケースにも、微妙な影が差しこんでおり、その不安な気持ちが如実に表れている素晴らしい演出です。
一緒の帰り道
日が暮れるまで、忙しく動き回っていた侑と一緒に帰る歩夢。
せつ菜と一緒に帰らないことに安心するような、そうでもないような絶妙な雰囲気。
二人の帰り道というだけで幸せなはずなのに、それ以上のことを望んでしまうのが恋心の難しいところ。
「東雲も藤黄も私たちも、それぞれカラーが違うからそのみんなの願いを叶えるって大変なことだよね。」
歩夢の放ったこの一言が侑の悩みを解決する糸口になる一方、
サブタイトルの"みんなの夢、私の夢"に内包された意図を感じさせる発言にもなっています。
スクールアイドル好きみんなが楽しめるお祭り
侑たちが出した答えは、"スクールアイドル好きみんなが楽しめるお祭り"。
スクールアイドルだけでなく、焼き菓子同好会や服飾同好会、バスケ部の様にスクールアイドルを応援する人の夢まで叶えてしまうような、ライブだけでなく街全体で行う大きなフェスティバル。
会場も一つに絞らず全てを会場に。
自分の好きを自由に表現できる、スケールの大きい本当にワクワクする企画になりました。
副会長もせつ菜ファンに
最初に企画を持ち込まれたときからスクールアイドル同好会について勉強し、せつ菜のファンになった副会長。
同じスクールアイドル好きとわかった瞬間にため口になり、一瞬で距離を詰める侑は流石と言ったところ。
会長の正体がばれるかと思いきや、同じせつ菜のファンとして同士と思われる展開に。
恐るべし、おさげとメガネの力。
少し困った顔の会長も非常に可愛いです。
歩夢とせつ菜
二人きりになったタイミングで、せつ菜に申請書について、そして合宿の日のことを聞く歩夢。
自分に出来たことは微々たるものだと謙遜するせつ菜でしたが、それさえも出来なかった歩夢は自分の無力感をより一層強く感じてしまいます。
さらに追い打ちになったのが、侑がピアノの練習をしていたということ。
仲良しで今までずっと一緒にいた歩夢が侑について知らないことなんてきっとなかったはず。
本来であれば喜ぶべきことなのかもしれませんが、この事実は大きく歩夢の心を傷付けます。
特筆すべきはやはり第1話。
せつ菜のステージに魅了されてスクールアイドルに興味を持ち、それをきっかけにピアノの練習をしたとなっては、歩夢の独占欲が強くなってしまうのも仕方の無いことです。
「私だけの侑ちゃんでいて。」
伝えたいことがあると侑から連絡があり、部屋に向かう歩夢。
部屋には確かに、自分が知らないピアノが。
自分にはピアノのことを伝えてくれなかったのに、せつ菜にはピアノのことを伝えていることに感情をあらわにする歩夢に対し、侑は冷静にそれを否定。
もっと大きな夢を告げようとする侑ですが、それを歩夢に遮られ、ソファに押し倒されます。
「聞きたくないよ。」
「私の夢を一緒に見てくれるって、ずっと隣にいてくれるって言ったじゃない。」
「私、侑ちゃんだけのスクールアイドルでいたい。」
「だから、私だけの侑ちゃんでいて。」
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