2020年のアニメで最も勉強になる作品、『本好きの下克上 司書になるためには手段を選んでいられません』、通称『本好き』。
前世の記憶を巧みに使いつつも、ただただ本を作るために奔走したマインの冒険に一旦幕が下ろされました。
今回はそんな『本好き』の魅力を語っていきたいと思います。
『本好きの下克上 司書になるためには手段を選んでいられません』とは
©香月美夜・TOブックス/本好きの下剋上製作委員会
TVアニメ『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』第二部 本PV
あらすじ
目覚めると、そこは本のない異世界だった――
活字中毒で本を偏愛する大学生・本須麗乃は、不慮の事故で命を落とす。それは、念願である図書館への就職が決まってすぐのことだった。
気が付くと麗乃は、貧しい兵士の娘・マインとして転生していた。
そこは、魔法を持つ貴族が支配し、厳しい身分制度が存在する異世界の街・エーレンフェスト。
マインは、本があれば生きていけると自分を鼓舞する。ところが、識字率が低く印刷技術もないこの世界では、貴重で高価な本はお貴族さまのもの。
兵士の娘では、とても手が届かない。
どうしても本が読みたいマインは決意する。「本がなければ作ればいい」
体力もない。お金もない。あるのは麗乃時代に読み漁った読書による膨大な知識だけ。
果たして、マインは本を作ることができるのか!?
マインの本を作る冒険が、いま始まる。
スタッフ
原作:『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』(TOブックス刊)
著者:香月美夜
イラスト:椎名 優
監督:本郷みつる『クレヨンしんちゃん』『テンカイナイト』『モンスターハンター ストーリーズ RIDE ON』
副監督:川崎芳樹
シリーズ構成:國澤真理子『初恋限定。』『まじもじるるも』『宝石商リチャード氏の謎鑑定』
キャラクターデザイン:柳田義明、海谷敏久
総作画監督:柳田義明、海谷敏久、遠藤江美子
プロップデザイン:ヒラタリョウ
美術監督:木下了香
美術設定:天田俊貴
色彩設計:一瀬美代子
撮影監督:北村直樹
編集:長坂智樹
音響監督:渡辺 淳
音響効果:倉橋裕宗
音響制作:JTB Next Creation
音楽:未知瑠『終末のイゼッタ』『三ツ星カラーズ』『ギヴン』
音楽制作:フライングドッグ
アニメーション制作:亜細亜堂
プロデュース:ジェンコ
キャスト
マイン:井口裕香
フェルディナンド:速水 奨
ルッツ:田村睦心
ベンノ:子安武人
トゥーリ:中島 愛
ギュンター:小山剛志
エーファ:折笠富美子
オットー:日野 聡
マルク:前野智昭
フリーダ:内田 彩
グスタフ:中 博史
ギル:三瓶由布子
フラン:狩野 翔
デリア:都丸ちよ
ロジーナ:鈴木みのり
ヴィルマ:安野希世乃
おすすめポイント
『本好き』のアニメは大きく、第一部と第二部に分かれます。
第一部では、異世界に転生してきたマインが、本のない世界で、
「本が無ければ作ればいい」
と紙をはじめとして、シャンプー、髪飾りなど色々なものを作りながら少しずつ紙の大量生産、本づくりを目指していきます。
第二部では、神殿の巫女となったマインが町の常識、神殿の常識に振り回されつつも本を作るため、周りの力を借りながら立派な神殿巫女に成長していくお話です。
個人的に大好きな第二部第10話「ルッツの行く道」は、こちらの記事で熱く語っています。
今回は第一部と第二部まとめて、以下の3つのポイントから紹介していきたいと思います。
・前世の記憶を持ったマインの"知的無双"
・神殿の巫女見習いとなったマインのさらなる成長
・語らずにはいられない思い出深すぎる主題歌4曲
前世の記憶を持ったマインの"知的無双"
©香月美夜・TOブックス/本好きの下剋上製作委員会
なろう小説で異世界転生モノといえば何を思い浮かべますか?
きっと多くの人が思い浮かべるのは、チート能力を持った主人公の武力的な無双でしょう。
他の人が持ちえないようなスキルや、進化能力を生かしてバッタバッタと敵を倒していくストーリーは非常に爽快です。
『本好き』の主人公、マインは非常に病気がちで、一人で街中を歩けないほどに弱っていました。
しかしマインは、前世の記憶を維持しており、転生してきた世界の住人が知りえないような知識をたくさん持っていました。
この知識を利用しての"知的無双"が『本好き』最大の魅力です。
どうしても本を作りたいマインは、まず最初に石板に目を付けます。
この世界の市民は一般的に石板を利用しており、文字の読み書きができる人は石板を使って計算をしたり、物事を伝えたりしています。
そこから、草の繊維を紡いで作るパピルスや、土を固めて作る粘土板、木の札に文字を書く木簡、そして木の枝を使って作る紙へと、どんどん大量生産可能な現代の紙に近いものを作っていきます。
もちろん、その工程は簡単なものではありませんでした。
その病弱さ故に、長時間の作業はできず、無理をすれば寝込んでしまいます。
周りから、マインが何をしているのかの理解も得られておらず、せっかく集めた木材を処分されてしまったこともありました。
粘土板を作る際には何度も何度も失敗して、心が折れそうになることもあったでしょう。
それでも、どうしても本が作りたいという強い熱意の元、様々な失敗からその原因を分析し、次につなげていくマインの熱意と論理的な思考には多くのことを学びました。
また、日々の生活の中でただ生活を豊かにしたいがために作った、髪飾りやシャンプー、スイーツのレシピなどが商人のベンノさんに注目されます。
製作した物を売るのではなく、その世界のだれも持っていないノウハウを利用して、いかに利益を上げるかというような話は非常に面白く、ためになりました。
前世の記憶は持っているものの大学生で知識が止まっているマイン。
ベンノさんからいかに商談を有利に進めていくかという交渉術を学ぶ姿を通して、時代や世界が変わっても通用するマーケティングスキルの重要性を感じました。
その後もマインの"知的無双"は続きます。
転生してこの世界に来たからこその常識にとらわれない発想や振る舞いは、時にマインの身を危険にさらしますが、着実に「本を作る」というマインの夢への道を一歩一歩進ませてくれます。
ぜひ、第一部・第二部と見て"知的無双"を味わいつつ、『本好き』から学べるものを吸収して、マインと一緒に成長していく快感を味わっていただければと思います。
神殿の巫女見習いとなったマインのさらなる成長
©香月美夜・TOブックス/本好きの下剋上製作委員会
"身食い"の症状を抑えるため、神殿の図書室で心置きなく本を読むため、神殿の巫女見習いとなったマイン。
第二部では、神殿の中の話を中心にストーリーが展開されます。
巫女見習いはいわゆる貴族のような扱いとなり、それぞれ専属の側仕えが付いてマインの身辺の世話をすることになります。
しかし、全く貴族らしくない振る舞いをするマインに、側仕え達は非常に反抗的な態度を取ります。
神殿では主が側仕え達の衣食住を保証することになっているのです。
与えるべきものを与えていない状態では側仕え達がちゃんと働かないのも仕方ありません。
神殿の常識も、貴族らしい振る舞いもわからないマイン。
少しずつ神殿の常識を学びながらマイン独自のやり方で、側仕え達の能力が十分に発揮できるよう、的確な指示を出していきます。
その様子はさながら幹部候補として転職してきたエリート社会人のようでした。
神殿内には孤児院もあるのですが、全く管理が行き届いておらず子供たちは今にも死にそうなほど飢えていました。
そんな子供たちを救うべく、孤児院長に就任し、成果を上げた人に食べ物を支給するご褒美制度を導入します。
明日を生き延びるために働き始める子供たちでしたが、次第に自分で色々挑戦することの楽しさを知っていきます。
いきなり物を与えるのではなく、労働の対価として報酬を与える。
マインにとってはありがたい新たな労働力になりますし、子供たちも自分たちの力で生きていくための力を身に着けることが出来る一石二鳥の施策です。
そんなマインの様子はさながら幹部候補として転職してきたエリート社会人のようでした(2回目)。
その後も、言われたことしかやらない側仕えや、孤児院の中からずっと出てこない側仕えなど新たな問題も発生します。
そんな問題をマインがどうやって解決をしていくのか。
理想の上司となったマインの姿から色々なことを学びながら、「本を作る」という大きなテーマを達成するまでの道のりを楽しむことが出来るはずです。
語らずにはいられない思い出深すぎる主題歌4曲
どの主題歌も本当に良いんです。1曲1曲、自分の感じた想いを交えつつ紹介していきます。
第1部OPテーマは、
「真っ白」/ 諸星すみれ(作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:白戸佑輔)
諸星すみれ「真っ白」ミュージックビデオ(Short Ver.)
『アイカツ!』の星宮いちごちゃん、『ハイキュー!!シリーズ』の谷地仁花ちゃん、『BNA ビー・エヌ・エー』の影森みちるちゃんなどで有名な、諸星すみれさんのデビュータイアップです。
数々の名曲を生み出してきた白戸佑輔さんの幻想的で広がりのある楽曲に、同じく数々の名曲の言葉を紡いできた岩里祐穂さんの作品に寄り添った歌詞に、それを歌う諸星すみれさんという、とんでもない構成になっています。
世界中でいちばんまぶしいものは
何にもきまってない知らない明日
両手にあるものなら未来だけ
希望がページをいまめくるよ
引用元:「真っ白」/ 諸星すみれ
一言一句に一切無駄のない、完璧なサビです。
転生した先でマインが目指す明日。
紙さえない状態から始まるマインの本づくりは、まさに「何もきまってない知らない明日」です。
何も決まってないからこそ、自分で何をするべきか決定して、未来に向かって自分がやりたいことが出来る。
白紙の本のように真っ白な明るい未来の情景が浮かびます。
「ページ」というワードでしっかりと『本好き』らしさが表されているのも本当に素晴らしい。
そして諸星すみれさんのアーティスト活動の無限の可能性や、明るい展望も予感させてくれます。
聴くだけで元気がもらえる希望に溢れた楽曲です。
第1部EDテーマは、
「髪飾りの天使」/ 中島愛(作詞・作曲:吉澤嘉代子 編曲:清竜人)
マインの実姉であるトゥーリを演じる中島愛さんが歌うEDテーマ。
木琴と弦楽器の音色、透明感あふれる中島愛さんの歌声が、中世ヨーロッパの世界観を作り上げていて、聴くたびに全身の筋肉が弛緩するほど癒し効果を感じます。
作中ではマインがトゥーリのために髪飾りを作るお話がありました。
©香月美夜・TOブックス/本好きの下剋上製作委員会
マインは「トゥーリは私の天使」というほど、トゥーリのことを大切に思っており、この楽曲からもその強い想いが伝わってきます。
本に強い執着を持っているマインが、家族も大切にしようと思っているのはトゥーリの存在が非常に大きいからです。
作中でもたくさん描かれる一つのテーマ、"家族愛"にフォーカスした心温まる楽曲です。
第2部OPテーマは、
「つむじかぜ」/ 諸星すみれ(作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:白戸佑輔)
諸星すみれ 「つむじかぜ」ミュージックビデオ(Short Ver.)
第1部OPテーマと同じ最強の布陣で送るこちらの楽曲。
「真っ白」から大きく成長して、さらなる一歩を踏みだす、強い勢いを感じさせてくれます。
第二部では、確かな実力と権威を持ったマインが周りを巻き込みながらどんどん、先へ先へと進んでいきます。
もう既に自分で希望を見出すだけでなく、周りに希望を与えるところまで成長しているマインにぴったりな楽曲です。
鬱屈な感情が解き放たれて、開放感に包まれるサビは何度聞いても気持ち良い爽快感があります。
第2部EDテーマは、
「エフェメラをあつめて」/ 鈴木みのり(作詞:やなぎなぎ 作曲・編曲:kz)
鈴木みのり - 『エフェメラをあつめて』(Short Ver.)
エフェメラとは一時的に書いたメモや手紙、ハガキなどを指す言葉です。
語感の美しさも素晴らしいですし、『本好き』にぴったりな単語ですよね。
自分がしてきた一つ一つの体験がエフェメラになり、エフェメラがあつまって自分という本が構成される。
自分のエフェメラと他の人のエフェメラがあつまって、もっともっと素敵な本になる。
マインとマインを支えてきた家族、友達の関係性を表す言葉としてこんなに素敵な表現は他にないかもしれません。
鈴木みのりさんの一言一言の歌詞がはっきりと心に残る癒しボイスも素晴らしい。
どの楽曲も『本好き』に寄り添いながら、聴くだけで自分の人生も前向きに生きていこうと思える元気がもらえる楽曲です。
配信情報
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アニメを見ながらも、人生や仕事に役立つ考え方を学ぶことが出来る、とてもためになるアニメです。