自分らしさってなんだ?
自分を形作っていた過去も、自分の考えを生み出している脳も、その全てを否定された時、自分はいったい何者なのでしょうか。
今回は、第9話「真実」の先でアイコがたどり着いた"自分とは何か"、"生きるとは何か"というテーマを描いた最終回「再生」を振り返りながら、『A.I.C.O. Incarnation』の魅力について語っていきたいと思います。
『A.I.C.O. Incarnation』とは
アニメーションスタジオ・ボンズ×村田和也監督のオリジナルバイオSFアクション!『A.I.C.O. Incarnation』本予告編
©BONES/Project A.I.C.O
あらすじ
バイオテクノロジーが急速に発展した、近未来の日本――。
「人工生体」の研究中に起きた大事故“バースト”により、
暴走した人工生命体“マター”が黒部峡谷一帯を侵蝕。
人類にとって希望の地と謳われた研究都市は、政府により立ち入りが禁じられた。その災厄から2年後の2037年。
バーストで家族を失った15歳の橘アイコは、
転校生の神崎雄哉から信じがたい事実を告げられる。それはアイコも知らなかった、自身の身体に隠された“秘密”だった。
それを解く鍵は、バーストの中心地“プライマリーポイント”にあるという。アイコは、案内人の神崎雄哉と護衛部隊のダイバーたちと共に、
封鎖されたエリアへの侵入を決意するが。人類の未来を背負う少年、少女が出会った時、明らかになる真実とは?
スタッフ
原作:BONES
監督:村田 和也『翠星のガルガンティア』『正解するカド』
シリーズ構成:野村 祐一『亡念のザムド』『コメット・ルシファー』
キャラクター原案:鳴子 ハナハル『翠星のガルガンティア』『神田川JET GIRLS』
キャラクターデザイン・総作画監督:石野 聡『乃木坂春香の秘密』『キャプテン・アース』『RELEASE THE SPYCE』
コンセプトデザイン:岡田 有章
メインメカニックデザイン:高倉 武史
マターデザイン:三輪 和宏
美術監督:東 潤一
色彩設計:岩沢 れい子
CGIディレクター:太田 光希
撮影監督:福田 光
編集:坂本 久美子
音楽:岩代 太郎『H2』『ブレイドアンドソウル』『アルスラーン戦記』
サウンド・プロデュース:UTAMARO Movement
音楽制作:ランティス
音響監督:明田川 仁
音響効果:古谷友二
アニメーション制作:BONES
キャスト
橘 アイコ:白石 晴香
神崎 雄哉:小林 裕介
相模 芳彦:古川 慎
水瀬 一樹:村田 太志
芹 遙香:名塚 佳織
三沢 楓:M・A・O
篠山 大輔:竹内 良太
白石 真帆:茅野 愛衣
黒瀬 進:大川 透
伊佐津 恭介:子安 武人
南原 顕子:田中 敦子
第12話「再生」
あらすじ
多目的手術装置「アルサス」に辿り着く雄哉たち。
ついに、アイコの体の交換手術が始まろうとしていた。
しかし、伊佐津の暴走は留まるところを知らず、人型マターの群れが雄哉たちを襲う。
そこへ駆けつけたのは、相模たちダイバーだった。
アイコの固い決意を知り、覚悟を決めるダイバーたち。
そして雄哉は手術を前に、自分自身の思いをアイコに告げる。
雄哉とアイコ、共に歩んできた二人が選ぶ未来とは――。
スタッフ
脚本:野村祐一
絵コンテ:村田和也
演出:三宅将平、守田芸成、飛田剛
作画監督:堀川耕一、可児里未、伊藤嘉之、石野聡、秋山英一、永作友克、加藤愛仁、加藤やすひさ、田中誠輝、陣内美帆、芳尾勝美、山﨑秀樹
マター作画監督:三輪和宏、水畑健二、本城恵一朗、佐藤由紀
ピックアップポイント
ついにアイコの身体の交換手術がはじまる
プライマリーポイントの最深部、そしてすべての事象が始まった原点、多目的手術装置の「アルサス」に辿り着いたアイコたち。
ダイバーたちはここまで一緒に来たアイコとの別れを非常に残念に思いますが、アイコの決意は固い。
マターの大群に襲われながらもアイコの手術が始まります。
雄哉の決意
「君は自分が本物の橘アイコでないことを受けとめ、それでもなお、本物の彼女と君自身にとって最善の道を探し、決断をした。その決断は偽物じゃない。」
「君は僕が作り出した嘘なんかじゃなかった。この世に生まれた瞬間から君は本物の君なんだ。そんな君を無かったことになんかできない。僕は君を死なせない。」
「君が君として生きられる世界を僕の手で作りだす。それが僕の果たすべき本当の贖罪だ。」
第9話で今まで自分自身が本物のアイコだと考えていた前提をひっくり返され、自分とは何かという大きな命題を考えさせられるアイコ達や我々視聴者。
"この世に生まれた瞬間から君は本物の君なんだ。"という言葉は、作り物のアイコの存在を全肯定するものであり、自分とは何かという命題への答えでもあります。
第9話についてはこちらの記事で熱く語っています。
ただ単にアイコの身体を元に戻すだけではない、本物のアイコ、作り出されたアイコ、どちらも救うための手術が始まります。
暴走する伊佐津を止めるダイバーたち
娘の柚葉を救うために、何でもしてきた伊佐津。
最後には正気を失い、雄哉の邪魔をするためならと、柚葉の複製体さえもマター化させ、襲いかかります。
一樹は右腕の義手を犠牲に、アンチセル・アセンブラを複製体の中に投与。
アイコのことを強く思う気持ちが、この大きな危機から脱出させてくれました。
人間の一樹が作り物のアイコのために、自分の作り物の腕を犠牲にする展開は非常にエモーショナル。
何物にも代えがたい、"想い"の強さを実感する印象的なシーンです。
本物の橘アイコの復活、そして…
間一髪のところで手術が終了し、本物のアイコが復活。
しかし、残された作り物のアイコの身体は死滅。
アイコを救えなかったと絶望の淵に立たされる雄哉たちでしたが…
グミがアイコの生体情報を保存しており、その体を復元。
本物のアイコともう一人のアイコ、二人のアイコが独立した存在としてこの世に生を受けることに。
まさかグミにこんな大切な伏線があったとは…雄哉の言う通り、まさに父親に一本取られました。
作り物のアイコ、家族とのお別れ
アイコ二人と母と弟、これからは4人で生活しようと提案する本物のアイコでしたが、家族にはこれから平和に穏やかに過ごしてほしいとその申し出を断る、作り物のアイコ。
せめて最後にと、何も知らない家族とのお別れのシーンは涙なしに見ることはできません。
ここまで心配してくれる母親の気持ちを一身に受け、アイコもこの辛くて長い旅路が報われた思いでしょう。
「生きててくれて、ありがとう。」
アイコが泣きながら告げた最後の言葉は、まさに万感の思い。
本作のテーマでもある"生きること"の意味を教えてくれる言葉でもあります。
1年後
本物のアイコと別れ、1年間の月日が流れました。
ありふれた家族との日常や学校生活、作り物のアイコが手を尽くさなければ決して手に入ることのなかった日々をアイコは過ごします。
そして作り物のアイコがアイコとして生きられる世界を雄哉は作ってくれました。
ラストカット、アイコは学校に転入してきます。
「初めまして、私の名前は…」
オープニングテーマ「A.I.C.O.」/ TRUE
歌うのは『響け!ユーフォニアム』の「DREAM SOLISTER」や、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の「Sincerely」で知られるTRUEさん。
作詞はTRUEさんの作詞家名義である唐沢美帆さん。
作曲は『翠星のガルガンティア』や『正解するカド』、そして本作の劇伴も務めている岩代太郎さん。
日本を代表する作曲家である岩代太郎さんの重厚感のある楽曲に、作品に寄り添った言葉を紡ぐ唐沢美帆さんの歌詞、そしてそれを歌い上げるTRUEさんの歌唱力が見事な連鎖反応を起こしている名曲です。
お話の序盤ではこの歌詞の真意を汲み取ることは難しいのですが、話数が重なり、アイコたちの真実・運命を知れば知るほど1フレーズ1フレーズが胸に刺さります。
さぁ 生きよう
君だけの命を
降り積もるのは
記憶の欠片
想いが<ヒト>を創る
出典:「A.I.C.O.」/ TRUE
『A.I.C.O. Incarnation』の終盤の展開を知らないと、"生きよう 君だけの命を"や、"想いが<ヒト>を創る"という言葉も何となく良い言葉だなあと思う程度。
アイコの脳が作り物だった、信じていた思い出も全て人工的にインプットされたものだった。
ここまで生きてきた過去の自分をすべて否定された瞬間、"自分とは何か"、"生きるとは何か"、様々な想いがアイコはもちろん、見ている我々にもよぎったはず。
だからこそ最終回の雄哉の言葉や、母親から注がれる気持ちがアイコのアイデンティティを確立させ、生きる意味を教えてくれました。
それを端的に表したワードが、"生きよう 君だけの命を"、"想いが<ヒト>を創る"。
アニメの内容を知れば知るほど、楽曲が味わい深くなるアニソンの醍醐味が詰まった1曲です。
エンディングテーマ「未知の彼方」/ 白石晴香
歌うのは橘アイコを演じる白石晴香さん。
作詞は『ドラゴンボールシリーズ』や『ゼロの使い魔シリーズ』、『アイドルマスターシリーズ』など数々の作品を提供してきた森由里子さん。
作曲はオープニングテーマと同じく岩代太郎さんが担当されています。
オープニングテーマ同様、重厚感はあるものの自然の雄大さや自由さを感じる、美しい縦笛の音色が特徴の楽曲。
一人歩みを止めずに進み続けるアイコの映像と併せて、未来への希望が詰まった綺麗で強い想いが感じられます。
アイコ自身は、バーストから目をそらして普通に生きていく事も出来た。
母親と弟が生きているという話を信じないで、戦わないことも出来た。
それでも、アイコは望む未来のため、"未知の彼方"のために、歩みを進めること選びました。
そんなアイコの確かな想いが見事に1つの楽曲として表現された素晴らしいエンディングテーマでした。
おわりに
個人的にTRUEさんのファンで、今までも多くのライブに行っておりましたが「A.I.C.O.」はずっと歌われてこなかった超レア楽曲。
2019年の「-TRUE 5th Anniversary Live Sound! vol.2 ~FAN SELECTION~」で1曲目に歌われたときは本当に嬉しかったです。
楽曲はもちろんのこと、作品のテーマも非常に胸に刺さり、生涯忘れることのできない大切なアニメの1本となりました。
主題歌がとっても素敵だった!
アイコのまっすぐな想いに感動した!
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また次の記事で!