『メジャーセカンド』。
『東京アニメアワード2021』に選ぶほど本当に大好きで、2020年を代表する作品だと思っている一本です。
辻堂中の野球部に入っていた光によって、メンタルを粉々に砕かれた大吾。
このままでは風林中野球部の団結も失われてしまう、絶体絶命のピンチ。
そんな絶望的な状況から美しく終わりを迎えた最終回、第25話「キミとまた…」について語っていきたいと思います。
『メジャーセカンド』とは
アニメ「メジャーセカンド」第2シリーズ PV第1弾【2020年4月4日(土)放送スタート!】
あらすじ
メジャーリーガーの父(吾郎)を持つ、主人公・茂野大吾と親友の佐藤光、佐倉睦子たちの友情を描いた前作(第1シリーズ)から2年―。
小学6年生だった大吾や睦子は、中学2年生の春を迎えていた。姉・いずみも通っていた私立風林中の野球部に進んだ大吾たち。
ところが、先輩の多くが抜け、残されたメンバーは個性的な女子ばかり。
そこにクセの強い新入生たちもやってきて…。山あり谷ありの中学野球部ライフが幕を開ける!?
スタッフ
原作:満田 拓也
監督:渡辺 歩『謎の彼女X』『宇宙兄弟』『恋は雨上がりのように』
シリーズ構成:土屋理敬『MAJOR』『プリパラ』『かみさまみならい ヒミツのここたま』
脚本:古怒田健志、末永光代、山下憲一、井上亜樹子
キャラクターデザイン:松元美季『殺戮の天使』
音響監督:亀山俊樹
音楽:中川幸太郎『スクライド』『コードギアス 反逆のルルーシュ』『デジモンユニバース アプリモンスターズ』
アニメーション制作:オー・エル・エム
制作:NHKエンタープライズ
制作・著作:NHK・小学館集英社プロダクション
キャスト
茂野大吾:藤原夏海
佐倉睦子:花澤香菜
仁科明:山下大輝
相楽太鳳:佐倉綾音
沢弥生:河瀬茉希
椛島アニータ:村川梨衣
藤井千里:上坂すみれ
関鳥星蘭:高垣彩陽
丹波広夢:杉田智和
第25話「キミとまた…」
あらすじ
風林中野球部は辻堂中に屈辱的な敗戦を喫した。
男子との差を突きつけられ、吹っ切れたような弥生や太鳳。
リベンジを誓い、より一層練習に打ち込もうとする仁科やアニータ。
ピッチャーとしての自信を打ち砕かれた睦子。
そして、再会した光にやりこめられ、情熱を失った様子の大吾。
そんな仲間たちを見つめるしかない関鳥や千代に、やっぱりマイペースの千里…。
すっかりバラバラになった風林ナインを再びつなぎとめるものとは…?
スタッフ
脚本:土屋理敬
絵コンテ:渡辺歩
演出:八木綾乃
作画監督:髙田晴仁、稲手遥香、菅原美幸、早川麻美
総作画監督:松元美季
ピックアップポイント
練習に来ない大吾、投げない睦子
辻堂中に完膚なきまでに叩きのめされた風林中野球部。
大吾は光からの言葉もあり、完全にメンタルを折られ、練習にも来ません。
代わりに頑張る睦子でしたが、ピッチャーとしての投球練習は拒否。
さりげないシーンですが、辻堂中との戦いで睦子もピッチャーとしてのプライドをズタズタにされていたことが伝わってきます。
下駄箱での言い合いの果てに倒れる大吾
居残り練習のため、照明の使用許可の話を大吾にする睦子。
大吾は居残り練習に反対、さらにそれに対する睦子の反論に大吾の感情が爆発します。
「なんだよ…何が気に入らないんだよ…俺は、良かれと思ってやってたんだ…チームのことを考えて精一杯やって来たんだ…俺はここで精一杯頑張って来たのに…」
「じゃあ、どうすればよかったんだよ!」
藤原夏海さんの息を切らした迫真の演技が心に刺さります。
風林中野球部に入ってから、理想のキャプテンであり続けようとした大吾。
まるで完璧超人の様に振る舞っていましたが、大吾もただの中学生。
最後の最後で年相応な姿を見せてくれました。
しかしこの作品、顔の赤面具合や、髪の毛の汗ばみ具合の表現が非常に良いですよね。
このカットでも運動後の息切れによる赤面とはまた微妙に違った雰囲気が良く表現されています。
心因性の過換気症候群
病院で診察をしてもらった大吾と母・薫。
告げられた症名は心因性の過換気症候群。
要するに大きなストレスが原因で過呼吸になったということですね。
お医者さんと薫が話をしている最中、大吾の前に現れたのは我らが茂野吾郎でした。
駆けつける英毅と桃子
話を終えた薫に声をかけるのは吾郎の父・英毅と母・桃子。
二人が顔を見せるのは小学生編の試合以来。
孫のピンチに駆けつける、優しいおじいちゃんとおばあちゃんです。
この二人が出ると一気に『メジャーシリーズ』の長い歴史を感じますね。
更に駆けつける睦子
さらにそこに大吾を心配して学校を抜けてきた睦子が合流。
先の展開は知りませんが、何となく今後の大吾と睦子の関係性の進展を予想させる構図です。
辻堂の光の件を薫に話す睦子でしたが、肝心の大吾は五郎に車で連れていかれていました。
大吾を連れまわす五郎
学校に帰ろうとする大吾の意思に反して、お昼ご飯やバッティングセンターに連れまわす五郎。
大吾のメンタルケアのつもりかもしれませんが、バッティングセンターでむきになってしっかり助言するあたりは五郎らしさを感じます。
ピンチの時は五郎が何とかしてくれる、そんな安心感がありますね。
現状のいら立ちを吐き出す大吾
光に言われたことや、変えられない現実など野球に対する真剣な、そして同時にどうしようもない想いをぶつける大吾。
五郎はそれを何も言わずに受け取ります。
特に印象的だったのは"がっかり二世"というワード。
もちろんこれは、寿也の才能を受け継いだ光と、五郎の才能を受け継がなかった自分を比較した、自分を揶揄する単語です。
小学生編では周りに"がっかり二世"と言われることに非常にストレスを感じていた大吾ですが、今回は自分でその言葉を口にしている。
光との対決がいかに大吾に大きな傷を与えたかが伝わってきます。
野球が好きになる魔法
「とことん野球をやりたいというホンマの気持ちを抑えてもあかんのや、無理が身体にきてまうんや。茂野先輩が倒れたのはそれが原因やで。」
最初に聴いた時はアニータの野球バカな思考も可愛いなあと思っていたのですが、よくよく考えるとこの解答は100点満点。
表面的には光の煽りのせいで大きなストレスがかかったように感じられますが、本質的にはその煽りを受けて"野球をやりたい"という気持ちを抑えつけようとしたからこそのストレスが原因と考えるべきでしょう。
二人は、太鳳が言っていた"シンデレラの魔法"から、野球を好きな気持ちの話に。
天然で恥ずかしいこともどんどん口にする千里のマイペースっぷりに癒されます。
こういう時にしっかり乗ってくるアニータも可愛いですね。
余談ですが、OPテーマ「白い泥」に出てくる"期限付きの世界"というフレーズはまさに"シンデレラの魔法"そのもの。
男性と女性が野球で同じフィールドに立つことの難しさを描く本作ならではの歌詞は、OPが変わったとき以上に大きな意味を持っており、本当に凄い歌詞だなあと改めて感服しました。
野球を好きな気持ち
五郎はキャッチボールをしながら、大吾のここまでの努力を素直に褒め倒します。
思っていることを素直に言っているだけなのでしょうが、メンタル的にも落ち込んでいる状態で、父であり、メジャーリーガーでもある五郎からの誉め言葉に、内心喜ばないはずもありません。
そして続く屈指の名言。
「出来る出来ないじゃねえ、やるかやらねえか、どっちかしかねえんだよ。それが好きな事ならな。」
光も大吾も野球を大好きな気持ちは同じ。
そしてそれは、二人だけではなく…
正直な気持ちをぶつけあう
人一倍頑張っている大吾に、これ以上頑張れとは言えないと悩む睦子。
チームなんだから正直な気持ちをぶつけあうべきだと、誰より大吾とチームのことを考えてきた睦子のことを見ていたからこその想いを伝える千代。
傷付いてるのはみんな一緒だと伝えたい関鳥。
3人は揃って大吾の元へ。
練習を抜け去っていく弥生と太鳳
大吾が倒れたのは自分たちの体力を気遣って、練習量を増やすべきかどうか、理想と現実のギャップに苦しみ続けたからだと自覚している弥生と太鳳。
「優しい王子様をただ待つのはごめんなの。」
そう言い残して二人はグラウンドを去ります。
言っている意味がよくわからなかったアニータですが、勘の鋭い千里の気付きにより、仁科と併せて3人でとある場所へ。
雨の中駆ける大吾
三船ドルフィンズが練習するグラウンドの脇を駆ける大吾。
田代監督が声をかけるも、大吾は振り向きもせず駆け抜けます。
大吾の迷いが吹っ切れたというわかりやすい演出であると同時に、ドルフィンズ時代の光とのエピソードにも心の整理がしっかりついて、それでも前に進む選択をしたという非常に大事なワンシーンですね。
そして可愛いいずみ姉さんの活躍の場でもありました。
グラウンドに全員集合
エンディングテーマ「IDENTITY」と共に、9人は風林中のグラウンドに再集合。
優しい王子様とは、誰でもない大吾のことでした。
「こら大吾、うちらに忖度してぶっ倒れるぐらいなら遠慮せず思いっきりやれ!」
「魔法の切れたシンデレラには、怖いものなんか何一つないから、ね?大吾。」
「あたしはシンデレラじゃないし、辛いし、痛いし、怖いし、恥かくし、でもさ、楽しいから、みんなとここにいることが嬉しい!」
「ぶっ倒れたってええんや、全力でぶっ倒れて、全力で起き上がったらええ!何度でも起き上がったらええんや!」
「私の将来の夢は、"魔法使いになる"です。野球のね。」
「俺はこの流れ全く分かってねえけど、どうせ泥だらけになるならユニフォームでなろうぜ!」
「えっと、あの…もし風林中にチームバスを置くなら、かぼちゃの馬車が良いと思います!」
「大吾、みんなに言われちゃって私は特別なこと言えないけど、もっともっと…一緒に野球しよ!」
「もう一度、プレイボールだ!」
今まで少年野球チームの写真を紹介していた最後のコーナーで、風林中野球部として出してくるエモすぎる演出。
しかも拓巳がおらず、丹波さんがいる!
千代さんは無理矢理風林のワッペンを付けたユニフォームですがしっかり汚れており、試合にも出たんだろうと想像できる。
細かいところまでこだわられた、最後の最高の一枚です。
配信情報
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