『八月のシンデレラナイン』。
2017年にスマートフォン用ゲームアプリとしてサービスを開始し、2019年4月からテレビアニメが放送されました。
そして2020年7月、『八月のシンデレラナイン Re:fine』としてブラッシュアップして再放送。
作画はもちろん、エンディングテーマも入れ替わり、また新たな魅力にたくさん気づくことが出来ました。
今回は野球を愛する女の子たちの苦悩や成長が描かれる、『八月のシンデレラナイン』の魅力について語っていきたいと思います。
『八月のシンデレラナイン』とは
©Akatsuki Inc./アニメ「八月のシンデレラナイン」製作委員会
あらすじ
市立里ヶ浜高校に入学した有原翼は、
野球部のないこの学校に「女子硬式野球部」を立ち上げる。そこに集うのは、
野球にはじめて触れる少女や、
一度はプレーをあきらめた少女、
高い壁に挑み続ける少女……。時にぶつかり、競い、支え合って、
里高女子野球部は青春を駆け抜ける!世界で一番あつい夏がはじまる――
スタッフ
監督:工藤 進『ベイビィ★LOVE』『南鎌倉高校女子自転車部』『Dies irae <ディエス・イレ>』
シリーズ構成:田中 仁『Go!プリンセスプリキュア』『ゆるキャン△』『魔王学院の不適合者 〜史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う〜』
アニメーションキャラクターデザイン:野口孝行『ロウきゅーぶ!』『少女たちは荒野を目指す』『天使の3P!』
音楽:小畑貴裕『ボールルームへようこそ』『約束のネバーランド』
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
原案:山口修平(アカツキ)
原作:アカツキ
キャスト
有原 翼:西田望見
東雲 龍:近藤玲奈
野崎夕姫:南 早紀
河北智恵:井上ほの花
宇喜多 茜:花守ゆみり
鈴木和香:緑川優美
中野綾香:高木 友梨香
岩城良美:山下七海
倉敷舞子:佐伯伊織
九十九 伽奈:白石晴香
初瀬 麻里安:八島さらら
阿佐田あおい:立花理香
ピックアップポイント
女の子だけのゼロから始まる野球生活
©Akatsuki Inc./アニメ「八月のシンデレラナイン」製作委員会
『八月のシンデレラナイン』の特徴と言えば、可愛い女の子たちがゼロから野球を始めるところ。
初めて野球をするからこその失敗や苦悩、それを乗り越えての成長が描かれます。
特に宇喜多茜さんの物語は要注目。
引っ込み思案で、人より運動神経が良くない宇喜多茜さんが、自分にしかできないことを見つけチームのために尽力する健気な姿は涙なしには見られません。
もちろん、宇喜多茜さん自身の成長も。
ベンチやランナーコーチ、縁の下の力持ちとして、自分が活躍したいという気持ちを抑えながら他人のために徹するのって本当にきついんですよね。
そんな辛い描写、しないほうが平和な気持ちでアニメが見られることは間違いないのですが、そこまで踏み込んだ内容だからこそ深く感情移入することができます。
ゼロからのスタートということもあり、練習描写もしっかりと描かれます。
泥まみれになって毎日体力の限界まで練習をしているということはありませんが、見ていて応援したくなるような真面目な描写とコミカルな描写がいい塩梅です。
メンバーが全員揃ってから行く強化合宿では辛い練習や面白い練習、合宿ならではの彼女たちの姿を見て応援したくなること間違いなし。
メンバーの半数以上が野球未経験という設定を上手く生かしたストーリー構成になっています。
きっと好きになる可愛いキャラクター達
©Akatsuki Inc./アニメ「八月のシンデレラナイン」製作委員会
野球は9人でプレイするもの、ということで里ヶ浜高校だけでもアニメでは11人の選手が登場します。
キャラクターデザインを務めるのは『ロウきゅーぶ!』、『天使の3P!』等を手掛けた野口孝行さん。
可愛い女の子の描写には定評しかありません。
特に自分が好きなのは野口孝行さんデザインの恥ずかしがる女の子。
絶妙な赤面具合や、眉間の間隔や眼の開き方等研究されつくした女の子の可愛いが詰まっています。
11人紹介するとちょっと長くなってしまうので3人ピックアップして紹介しようと思います。
©Akatsuki Inc./アニメ「八月のシンデレラナイン」製作委員会
本作の主人公であり、「女子硬式野球同好会」を立ち上げた有原翼さん。
誰にも負けない野球に対する強い愛を持っていて、行動力もありみんなを引っ張るリーダー的な存在です。
初心者のメンバーにもちゃんと気遣いできる優しさを持っていながら、決断するときはしっかり決断できる、まさに理想のキャプテン。
そのポジティブさに里高メンバーはもちろん、我々視聴者も多くの元気をもらいました。
©Akatsuki Inc./アニメ「八月のシンデレラナイン」製作委員会
翼のことをシニア時代から知っていて、まるでお遊びのような同好会に興じる翼に不満を抱くほど、野球に真剣でストイックな東雲龍さん。
彼女を通して描かれたのは、野球に対する向き合い方の多様性。
出会ったばかりの頃の東雲さんにとって、野球はただただ上を目指すこと、強くなることが全てでした。
そんな彼女が翼と出会い、野球を心から楽しむ姿勢や、みんなで支え・補い合うチームワークの大切さを学び、野球に対する考え方が変わっていくのも本作のまた一つの大きな魅力。
そのストイックさ故に野球以外のところでポンコツな部分も多く、序盤のライバル感と後半のギャグキャラ感の差も楽しむことが出来ます。
©Akatsuki Inc./アニメ「八月のシンデレラナイン」製作委員会
前の項目でも少し紹介しましたが、引っ込み思案で運動神経が他の子よりもあまり良くない野球初心者、宇喜多茜さん。
自分も小学生の頃野球のクラブに入っていたのですが、バッティングが点でダメで劣等感を凄く感じていたことがありました。
どうして自分が試合に出られないんだろうという不満や、試合に出られないなら練習しなくてもいいじゃんという憤り。
そんな感情に支配されてしまって小学5年生でクラブを辞め、それ以降は野球部にも入らなかったという少し苦い経験があります。
そんな経験があるからこそ、宇喜多茜さんが仲間のために何ができるか必死で模索し、自分自身もいつか試合で活躍するために練習を重ねる姿はダイレクトに胸に刺さりました。
野球だけに限らず、何かに挫折してしまったことのある人はきっと感情移入できる部分があるはず。
一人の女性としてはもちろん、自分自身の過去と重なる部分もあって大好きなキャラクターの一人です。
キャラクターボイスを務める花守ゆみりさんのオドオドした演技や心から嬉しそうな演技も素晴らしく、この作品の裏の主人公ともいえる存在です。
他にもまだまだたくさんの魅力的なキャラクターが登場する本作。
ゲームの方ではもっともっと多くのキャラクターがいますので、きっとあなた好みのキャラクターがいるはずです。
音楽活動も行っている本作を彩る素敵な楽曲たち
野球を飛び出して、作中内のメンバーで組まれたユニットで音楽活動も行っている『八月のシンデレラナイン』。
現段階で既にシングルが1枚、ミニアルバムが3枚、カバーアルバムが1枚発売されています。
そんな音楽活動にも真剣な『八月のシンデレラナイン』のアニメを彩った楽曲たち。
せっかく『八月のシンデレラナイン Re:fine』の放送後に書いている記事なのでRe:fineでのみ流れた楽曲についても触れたいと思います。
オープニングテーマは、
「エチュード」/ みゆはん
エチュード / みゆはん(TVアニメ「八月のシンデレラナイン」OP曲 ノンクレジット)
作詞・作曲・編曲:菅波栄純
歌唱を担当するのは『けものフレンズ』EDテーマで大きな話題を呼んだみゆはんさん。
作詞・作曲・編曲はTHE BACK HORNのギター、『機動戦士ガンダム00』の「罠」や、「閉ざされた世界」も手掛けた菅波栄純さんが担当されています。
シンプルなバンドサウンドに、印象深いギターのフレーズが夏感・青春感を醸し出しています。
サビ前のジャカジャカジャカジャカは何回聴いても大好きだなあという感じ。
飾りすぎない楽曲全体のナチュラルな感じが、未完成の彼女たちらしさにもつながっていますし、"エチュード"=練習曲というタイトルにもぴったり。
歌詞も歌詞で青春のエモーショナルさがつまりにつまっています。
”その眼差しが好きだよ”というフレーズが非常に印象的で一度聴いたら絶対に忘れないほど強烈です。
その眼差しが、背中を押してくれる。
その眼差しが、背中に生える翼になる。
第10話のサブタイトルともなっている「背中に翼」と直結する歌詞はもはや卑怯のレベル。
アニソンの歴史に名を残すほど素晴らしいメロディと歌詞は、聴くだけで『八月のシンデレラナイン』の記憶を呼び起こしてくれます。
次に紹介するのは『八月のシンデレラナイン Re:fine』の第8話エンディングテーマ、
「ぬかるみ」/ 有原翼(西田望見)、東雲龍(近藤玲奈)、野崎夕姫(南早紀)、河北智恵(井上ほの花)
ぬかるみ -short ver- / 八月のシンデレラナイン(ハチナイ)
作詞・作曲・編曲:栁舘周平
作詞・作曲・編曲を担当するのは新進気鋭のクリエイター、栁舘周平さん。
『えんどろ~!』の「えんどろ~る!」や、『カードファイト!! ヴァンガード外伝 イフ-if-』の「What-if Wonderland!!」、『アルゴナビス from BanG Dream!』の「 Starry Line」なども手掛けられています。
田淵智也さんや堀江晶太さんとの共作も多く、今最も注目すべきクリエイターの一人でしょう。
そんなことは経歴を見なくても、曲を聴けばわかります。
2000年代以降の強いアニソンのエッセンスを全て吸収したような仕上がり。
栁舘さんは「けいおん!」に多大な影響を受けたとWikipediaに書いてあるのですが、この楽曲はどちらかと言えば俊龍さん系の系譜。
物悲しいピアノが楽曲全体の雰囲気を美しく仕上げ、A・Bとサビでの盛り上がりのメリハリもまた素晴らしい。
大サビには期待を裏切らない跳びポもしっかりと配置されています。
歌詞は絶望的な状況でもあきらめない里高メンバーを歌った内容。
アニメでは雨の中での練習や試合といった描写はありませんでしたが、大きなハードルを乗り越えてきた彼女たちにはピッタリ。
むしろ、アニメで描かれなかった先のお話で、きっとこんな描写もあるんだろうなと妄想が膨らみます。
虹は要らない 代わりに僕が翔ぼう(何度でも)
誰も壊せないよ 僕らの足跡
出典:「ぬかるみ」/ 有原翼(西田望見)、東雲龍(近藤玲奈)、野崎夕姫(南早紀)、河北智恵(井上ほの花)
雨をテーマにした歌はどうしたって、"いつか虹が架かる"みたいなフレーズに繋がりがちですが、
"虹は要らない 代わりに僕が翔ぼう"という強烈なワードは 楽曲のカッコ良さにもぴったり。
1回しか使われなかったエンディングテーマにしておくにはもったいなさ過ぎます。
ライブ会場でぜひ生バンドで聴きたい一曲です。
最後に紹介するのは『八月のシンデレラナイン Re:fine』の第10話エンディングテーマ、
「背番号」/ 有原翼(西田望見)、東雲龍(近藤玲奈)、野崎夕姫(南早紀)、河北智恵(井上ほの花)
作詞:沙羅 作曲・編曲:奥井康介
作詞の沙羅さんは特に情報がありませんでした。
作曲・編曲は『ヤマノススメセカンドシーズン』の「Cocoiro Rainbow」、『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』の「Charming Do!」等を手掛ける僕も大好きな作曲家、奥井康介さんが務めています。
なんといってもこの曲が第10話のエンディングで流れたというのが一大事。
既にここまでである程度ネタバレになっているので書きますが、第10話「背中に翼」では河北智恵さんと宇喜多茜さんがスタメンから外されます。
だからこそ描かれるのは「背番号」の重み。
この楽曲では「背番号」を通して、自分の存在意義について描かれます。
誰もいない校庭に
ボールひとつぽつり
居場所がないみたいだ
私みたいだ
出典:「背番号」/ 有原翼(西田望見)、東雲龍(近藤玲奈)、野崎夕姫(南早紀)、河北智恵(井上ほの花)
スタメンに選ばれない、それだけで自分の居場所が無いと感じる気持ち。
自分自身も小学校の頃の野球クラブで身をもって体験しているので痛いほどその感情が伝わってきます。
どんなに野球以外のことを楽しんでも、心から楽しめていない気がする。
周りの人と自分を比較してしまって、もっともっと辛い気持ちになる。
特に宇喜多茜さんは、ランナーコーチとしても失敗してしまい、まさに絶望のどん底。
通り過ぎる季節の狭間で叫んだ
知ってしまったから戻れない
振ったバッドで輝く景色を
もう一度見るんだ
出典:「背番号」/ 有原翼(西田望見)、東雲龍(近藤玲奈)、野崎夕姫(南早紀)、河北智恵(井上ほの花)
そんな中でも、努力し続ける宇喜多茜さん。
努力が実り、少しずつ少しずつ成長していく姿と歌詞がリンクして、最終回の活躍を思い浮かべると泣かずにはいられません。
この曲が第10話のエンディングテーマで流れてくれて本当に良かったです。
他にも「どんなときも。」や「浪漫飛行」のカバー、オリジナル曲など名曲が目白押しのコンテンツ。
個人的には『おおきく振りかぶって』の「青春ライン」のカバーが大好きです。
ぜひ、アニメから一歩進んで楽曲も楽しんでみてください。
おわりに
数々の野球アニメがある中でしっかりと存在感を示した本作。
このブログでも『球詠』と、『メジャーセカンド』について語っていますが、この2作とはまた違った良さがあります。
野球経験者はもちろん、野球をやってみたいなと思っている初心者の方や、新しいことに挑戦する人の背中に生える翼となってくれる作品です。
自分はこのキャラクターが好き!
久しぶりに野球したくなった!
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今後もアニメに関する記事を毎日投稿していきますので、ぜひご覧ください。
また次の記事で!