『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかシリーズ』。
通称ダンまち。
2015年にアニメ化を果たし、2017年に外伝、2019年に第2期を描き、ついに迎えた第3期です。
第3期は人間の言葉を話すモンスター・異端児《ゼノス》を巡る物語。
人間とモンスターの共存、人間の悪意という大きなテーマを描いており、個人的には今までで一番面白いと思うほど。
今回は、そんな異端児《ゼノス》編の非常に大きなポイントである、
第8話「愚者 ─ベル・クラネル─」について語っていきたいと思います。
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅢ』
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅢ』PV
あらすじ
迷宮都市オラリオの中心に座するダンジョン――
数多のモンスターが産み落とされるこの大穴は、
未だ人類が想像しえない『未知』を無数に孕んでいる。
女神ヘスティアと冒険者ベル・クラネルが【ヘスティア・ファミリア】を結成し、はや数ヶ月。
幾人かの友を加え、彼らのファミリアは急速に成長の途を辿り、都市の注目を集めていた。
突如彼らの元に舞い込んできた『未知』――
それは異端児と呼ばれる言葉を発するモンスターだった。
『未知』は混乱を誘い、常識をも破壊し苦悩と葛藤を喚び起こす。
その先にある『可能性』を覆い隠してしまうほどに……
激闘のオラリオで、ビルに決断の時が迫る――
これは、少年が歩み、女神が記す、――【眷族の物語】――――
スタッフ
原作:大森藤ノ(GA文庫/SBクリエイティブ刊)
キャラクター原案:ヤスダスズヒト
監督:橘秀樹『ドラゴンクライシス!』『武装少女マキャヴェリズム』『サークレット・プリンセス』
シリーズ構成:白根秀樹『瓶詰妖精』『緋弾のアリア』『モンスター娘のお医者さん』
キャラクターデザイン:大本茂樹
音響監督:明田川仁
音楽:井内啓二『BTOOOM!』『王室教師ハイネ』『魔王学院の不適合者 〜史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う〜』
プロデュース:EGG FIRM/SBクリエイティブ
アニメーション制作:J.C.STAFF
キャスト
ベル・クラネル:松岡禎丞
ヘスティア:水瀬いのり
リリルカ・アーデ :内田真礼
ヴェルフ・クロッゾ:細谷佳正
ヤマト・命:赤崎千夏
サンジョウノ・春姫:千菅春香
リュー・リオン:早見沙織
アイズ・ヴァレンシュタイン:大西沙織
ウィーネ:日高里菜
第8話「愚者 ─ベル・クラネル─」
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅢ』第8話WEB予告
あらすじ
ディックスに惑わされ、地上へと出てしまったウィーネと、彼女を追ってきたベル。
彼らの前には、ウィーネをオラリオの脅威と判断した、アイズを始めとする【ロキ・ファミリア】の姿が……
都市最強の冒険者たちを前に、ベルが選択した行動は……
ウィーネを庇い彼らの前に立ちはだかることだった……
ベルを擁護するため、フェルズが、リドが、グロスやレイも動くが『都市最強』の壁は遥か高く立ち塞がる……
ピックアップポイント
因果応報のディックス
言葉を発するモンスター・異端児《ゼノス》の同士討ちを誘発する呪詛を発生させていたディックス。
ディックスさえいなければこんなことにはならずに済んだのに…
致命傷を負いながら逃げようとするディックスでしたが、ミノタウロスの異端児《ゼノス》であるアステリオスによって、その命は絶たれました。
ヘイトをためるキャラクターが多い本作ですが、そういうキャラにはしっかりと断罪を下すのが良いところです。
ウィーネを庇うベル
暴走し、地上に飛び出したウィーネを、都市最強のギルドであるロキ・ファミリアが襲います。
そんなウィーネを庇うベル。
暴走し暴れるモンスターを庇うなんて、全ての人類を敵に回すような行為。
ベルは、
「このヴィーヴルは僕の獲物だ、だから手を出すな!」
と周りを牽制。
冒険者の間で、獲物のモンスターを横取りするのは確かにルール違反ですが、それはダンジョンの中のみでのお話。
少しでも街に被害が出ないよう、多くの冒険者がウィーネに襲いかかります。
異端児《ゼノス》vs. ロキ・ファミリア
ウィーネを守るため、ダンジョンから出てきたリド達。
人間の言葉を話し、ベルと出会ったこともあって人間に理解がある彼らですが、街に出てしまえばただのモンスター。
ロキ・ファミリアは街のため、問答無用で彼らを討伐しようとします。
もしかしたら話し合えば理解しあえるかもしれないのに、人間の悪意のせいでその機会さえも失われてしまう悲しい展開です。
そして地上に現れる最強の異端児《ゼノス》・アステリオス。
ティオネ、ティオナ、ベートの3人掛かりでもその猛攻を止めることはできません。
アステリオスの放った巨大な雷撃は、リヴェリアの防御魔法越しに、街一帯を大きく崩壊させます。
アステリオスの生け捕りが不可能と判断したフィンは、最終手段として剣姫、アイズ・ヴァレンシュタインにその討伐を指示したのでした。
アイズ vs. アステリオス
『ソード・オラトリア ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝』を見た人にとっては、どのキャラクターよりもなじみ深いアイズ。
パワーではおそらく敵わないであろうアステリオスを圧倒的な速度で翻弄します。
上下、左右、前後と揺さぶる攻撃は流石ベルの師匠。
髪のたなびきや衣服の絶妙なシワでスピード感がある作画に仕上がっています。
線を崩しながら描く、華麗なステップのみのカットはより一層その速度感を際立たせていました。
アステリオスの攻撃を受ける際にはふわっと浮き上がったり、思いっきり後退させられたり、一撃一撃の重さが感じ取れる素晴らしい描写も。
まさに剣姫と呼ぶにふさわしい素晴らしい戦いぶりです。
あのヘスティアでさえ、その戦いぶりに、
「アイズ・ヴァレンシュタイン…」
と素直に名前を口にしてしまうほど。
普段から恋敵であるアイズのことを皮肉を込めて「ヴァレンなにがし」と呼んでいるからこそ、このシーンは非常に印象的でした。
人間に攻撃しながらウィーネを追うベル
暴れ、逃げ回るウィーネを追うベル。
行く手にはウィーネの動きを止めようとする多数の冒険者が。
当たらないように配慮はしつつも、ベルはファイアボルトを撃って冒険者を牽制しながらウィーネを追い続けます。
たとえモンスターを庇っていないと思われたとしても、自分の獲物を横取りさせないために街や冒険者に危害を及ぼすのは、後に大きな問題となりそうです。
消滅するウィーネ
抵抗むなしく、メイジたちの魔法やグランの一撃で、致命傷を負ってしまったウィーネ。
「夢を見るの、誰も私を助けてくれない、怖い夢。」
「でもね、今度は助けに来てくれた人が、いたんだよ。」
「嬉しい…」
「ベル、大好き…」
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅢ』は、ベルとウィーネの物語。
モンスターなのに人間の言葉を話す、こんなにも可愛いウィーネ。
人間に恐怖心を抱いていたウィーネを助け、一緒にご飯を食べ、お風呂に入った、平和な日々。
もしかしたら、異端児《ゼノス》と人間は分かり合えたかもしれないのに…。
ただ、ウィーネと一緒の日々を過ごしたかっただけなのに…。
挿入歌「繭色」/ sajou no hana
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅢ』第8話挿入歌sajou no hana「繭色」アニメMV
「未踏の領域よ、禁忌の壁よ。今日この日、我が身は天の法典に背く。ピオスの杖、サルスの盃。治癒の権能をもってしても届かざる汝の声よ。どうか待っていてほしい。止まらぬ涙、散る慟哭。代償は既に支払った。光の道よ。定められた過去を生贄に、愚かな願望を照らしてほしい。嗚呼、私は振り返らない。── ディア・オルフェウス」
フェルズの唱えた魔法と共に流れるのは、sajou no hanaさんによる挿入歌「繭色」。
『とある科学の超電磁砲T』第15話「やくそく」で流れた挿入歌「ここにいたい」もsajou no hanaさんだったなあと、改めてアニメのセリフやシーンに溶け込む素晴らしい楽曲に感服しました。
歌詞はタイトルの通り、繭という名の自分の殻から出るのを恐れていたウィーネがベルと出会い、傷付きながらも成長し、白かった繭が色づいていくという、ウィーネ視点の物語。
痛いなってやっと思えた
だからこの傷も尊くて愛しい
色が付いた会えて全部
声を追いかけて羽化したんだ脆いまま
出典: 「繭色」/ sajou no hana
ウィーネにとってのベルという存在の大きさ、そしてヘスティア・ファミリアのみんなと過ごした時間を思い出さずにはいられない素晴らしい挿入歌でした。
ウィーネ復活
「初めて、成功したよ。800年か、まったく無駄な魔法だと恨んでさえいたが、あぁ、意味はあったんだな…」
800年間成功することのなかった蘇生魔法が、ついに成功し、ウィーネは一命をとりとめます。
ベルとウィーネのお互いを想い合う強い気持ちが奇跡を生んだのです。
愚者
自分の行ったことは本当に正しかったのか、街を壊し、フィーネを傷付け、ディックスに偽善者と言われたベルは自分に自信が持てずにいました。
そんなベルに言葉を残すフェルズ。
「私はこう考える。偽善者と罵られる者こそが、英雄になる資格があると。」
「肉と皮を失った私が言おう、骨と未練しか残らなかったこの私が、あえて言おう。」
「愚者であれ、ベル・クラネル。君の持っているものはとても愚かで、しかし、きっとかけがえのないものなのだ。」
フェルズ=愚者と名乗る彼(彼女)が言うからこその、心に残る重たい言葉です。
心配してくれるエイナ
ギルド職員として、街と市民を危険にさらし、他の冒険者に危害を加えたことをベルに確認するエイナ。
一切の言い訳をせずに肯定するベルの頬をはたき、抱きしめます。
エイナがどれだけベルのことを想い、心配していたかがよく伝わってくるようです。
「冒険者は冒険してはいけない」を信条とする彼女を最後に出してきたのは、まさに「愚者であれ」というメッセージとの対比。
生き方に一つの答えなんてない、難しい問題を考えさせながら、第8話は幕を下ろします。
配信情報
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