『無限の住人』。
原作自体は1993年から2012年まで連載されていた歴史が長い作品で、2008年に一度目のアニメ化、舞台化や映画化もされています。
そんな多くのファンから愛される作品を全24話で、しっかりとキャラクターの過去や内面も掘り下げながら描き切った名作『無限の住人-IMMORTAL-』について語っていきたいと思います。
『無限の住人-IMMORTAL-』とは
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
あらすじ
武士というものがまだ存在していた江戸の世——。
百人斬りと呼ばれた【不死身】の男がいた。
その男の名は「万次」。
万次は、父母を殺され復讐を誓う少女「凜」と出会う。
凜は万次に、復讐の旅の用心棒になってくれないかと言う。
初めは断る万次だが、凜に亡くした妹の面影を見た。
一人では危うい凜の姿に、仕方なく手を貸すことに決める。
しかし凜の仇は、剣の道を極めんとする集団——逸刀流。
それは、不死身の万次すら追いつめる凄絶な死闘の始まりを
意味していた。
スタッフ
原作:沙村広明『無限の住人』(講談社「アフタヌーン」所蔵)
監督:浜崎博嗣『TEXHNOLYZE』『STEINS;GATE』『テラフォーマーズ』
シリーズ構成:深見真『ゆるゆり なちゅやちゅみ!+』『ベルセルク』『revisions リヴィジョンズ』
キャラクターデザイン:小木曽伸吾『あいうら』『アルスラーン戦記』
美術監督:工藤ただし
色彩設定:篠原愛子
撮影監督:増元由紀大
3DCGディレクター:市川孝次
編集:長谷川舞
音響監督:清水洋史
音響効果:武藤晶子
音楽:石橋英子
アニメーション制作:ライデンフィルム
キャスト
万次:津田健次郎
浅野凜:佐倉綾音
天津影久:佐々木望
凶戴斗:鈴木達央
黒衣鯖人:花輪英司
閑馬永空:咲野俊介
乙橘槇絵:桑島法子
阿葉山宗介:ふくまつ進紗
天津三郎:秋元羊介
川上新夜:小原雅人
吐鉤群:中田譲治
百琳:林真里花
偽一:白熊寛嗣
尸良:奈良徹
真理路:小林親弘
宗理:関智一
八百比丘尼:真山亜子
吉乃瞳阿:釘宮理恵
八苑狼夷作:かぬか光明
馬絽祐実:福田賢二
綾目歩蘭人:草尾毅
果心居士:佐々木梅治
杣燎:田中有紀
荒篠獅子也:楠大典
目黒:佐古真弓
たんぽぽ:尾身美詞
御岳:三上哲
おすすめポイント
延々と続く復讐の連鎖の物語
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
父と母を殺され、復讐を誓った凛という少女が、不死身の男・万次と共に、仇である逸刀流を追うのが本作のメインストーリー。
凛と万次さんはその長い旅路で様々な過去を背負った人物に出会います。
凛と同じく強い復讐の気持ちを抱いている者、人を殺すことにしか興味が無い者、幼いころからずっと虐げられ続けていた者。
特に復讐の描写については非常に濃厚。
強い復讐の気持ちが生まれる説得力のため、目を背けたくなるようなグロテスクなシーンや、女性がもてあそばれるようなシーンがかなり多いです。
ただ無意味にエロ・グロというわけではなく、よりストーリー・キャラクターに感情移入できるようなエロ・グロは良くも悪くもかなりメンタルにきます。
そんな様々な人物と出会い、色々な経験を通して復讐心に捕らわれていた凛がどのように変わり、どのように強くなっていくのかも本作の大きな見どころ。
序盤と終盤では本当に別人なんじゃないかと思うほど、立派な女性に成長します。
そして用心棒の万次さんも、人間味溢れる凛と共に行動することで、大きく変わっていきます。
大切なものを守ろうとする気持ちがここまで大きく人を変えるんだなと、きっと驚くはず。
確かにこんなことをされたら復讐するしかなくなるという展開から、復讐された側もまた、復讐し返すしかないという展開へ。
どんどんと続く憎しみの連鎖にどういった形で終止符を打つのか、最後の最後まで目が離せないストーリーが続いていきます。
一人一人思い出深い魅力的なキャラクターと魂のこもった圧倒的な熱演
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
メインは凛と万次さんの物語ですが、二人がほとんど出演しない回もあるほど他のキャラクターの深い掘り下げがされていた本作。
倒すべき逸刀流二代目統主、天津影久。
妹想いの逸刀流の剣士、凶戴斗。
最強の女剣士、乙橘槇絵。
残虐で非道の限りを尽くす最凶の剣士、尸良。
常軌を逸した芸術家、宗理。
どのキャラクターも自分にとっての正義が一貫しており、一人一人非常に筋の通ったキャラクターでした。
そしてそのキャラクターを演じるキャストさんたちの熱演。
一癖も二癖もあるキャラクターの魅力を存分に引き出し、死の淵の掠れるような声や、痛みにもだえ苦しむ絶叫など演技力が全てあらわになってしまうようなシーンも見事に演じ切られていました。
特に思い出深いのは第20話「霏々─ひひ─」の尸良を演じた奈良徹さんの演技。
純粋な悪の象徴ともいえる尸良の残酷さや狂気、頭のネジがすべて外れているような雰囲気はあの熱演無くして表現できなかったでしょう。
詳しい内容はこちらの記事に記載しています。
一度出てきたキャラクターが再登場することも非常に多く、だからこそ一人一人のキャラクターに深く感情移入することが出来ました。
メインストーリーとはそこまで関係なさそうなエピソードも、話の厚みを増すのに非常に大切な役割を担っていて、24話という尺を見事に生かし切った本当に素晴らしい構成でした。
作品にぴったりなアニソンらしからぬ主題歌たち
エンディングテーマは作品の余韻をしっかりと味わうことが出来るインストゥルメンタルの楽曲が採用されていました。
特に残酷な終わりを迎えた時はこのエンディングに何度救われた気持ちになったかわかりません。
OPテーマはアニソンらしくはないけれど、非常に作品に寄り添った楽曲です。
第1クールOPテーマは、
「SURVIVE OF VISION」/ 清春
【清春】「SURVIVE OF VISION」from『JAPANESE MENU / DISTORTION 10』【MV】
作詞・作曲:清春 編曲:三代堅、清春
歌唱及び作詞、作曲は黒夢、SADSでのバンド活動の他、ソロのシンガーソングライターとしても活躍する清春さん。
編曲にはM-AGEのMIYO-KENこと三代堅さんも携わっています。
聴いた方にはわかると思うのですが、本当に独特な世界観を持った楽曲です。
めちゃくちゃカッコよくて勢いのあるギターから入り、アップテンポな楽曲かなと思いきや、じっくりねっとり歌うAメロBメロ。
そして心の丈を叫ぶように歌い上げるサビ。
『無限の住人-IMMORTAL-』自体は江戸時代の日本を舞台にしたまさに"和"の作品ですが、歌詞のほとんどが英語。
それでも作品にぴったりだなあと感じるのはやはりこの独特な世界観によるものなのでしょう。
1番の後には、アニメに使われていない語りが。
天命を待つ間 この使命を生きる
誰も知らない それでも命は暮れる
誰かを想う それでも死ぬまで伝わらない
刃を研いで 骨を切れ
皮を削いで 血を流す
天命を全うして この使命を愛す
そして君を愛し 僕は救われる
君を救い 僕を愛す
答えはある
答えはないという答え
ただ これを尽くして
ただ ただこれを生きる
出典:「SURVIVE OF VISION」/ 清春
驚くほど作品にぴったりのフレーズで、アニメ本編で使われなかったのがもったいないなあと思うほど。
普段聴かないタイプの楽曲と出会い、清春さんの世界観に非常に心惹かれました。
第2クールEDテーマは、
「無限の住人 武闘編」/ 人間椅子
作詞・作曲:和嶋慎治 編曲:人間椅子
歌唱・編曲は怪奇をテーマとした独特な世界観を持つ3ピースバンド、『ニンジャスレイヤー』では「泥の雨~ニンジャスレイヤーVer.」も手掛けた人間椅子さん。
作詞・作曲は人間椅子のギター・ボーカルである和嶋慎治さんが担当されています。
実は原作の沙村広明さんが人間椅子さんのファンであり、依頼を受けて1996年にイメージアルバム「無限の住人」を発売していました。
そこから20年以上たった今、再度コラボをするというファンにとってはたまらない主題歌起用。
それほどのゆかりもあるということで、歌詞もまさに無限の住人のためだけの歌詞。
アニメを見ていた時はどんなふうに歌詞に記載されているのか気にしていませんでしたが、見てみるとビックリ。
斬ッ 金坐金坐金坐斬ッ
蛮ッ 罵罵蛮ッ
斬って斬って斬っても
刀剣薙刀
断ッ 打打断ッ
岩ッ 峨峨岩ッ
屠って屠って屠っても
刺客剣士剣客
出典:「無限の住人 武闘編」/ 人間椅子
先ほどの「SURVIVE OF VISION」とはうってかわって、ザ・日本語。
カタカナ表記なのかなと思っていたところまで漢字が使われています。
『無限の住人-IMMORTAL-』のまさに永遠に戦いが終わらない宿命。
傷付き、血まみれになりながらも必死で戦い続ける泥臭さが強く感じられます。
この歌詞をゴリゴリのハードロックに乗せるところがまたすごい。
オープニングの"動"とエンディングの"静"。
激しい戦いの後に残る悲しみやむなしさが主題歌でも色濃く表現されています。
おわりに
首や腕が飛んだりするのは全然気にならないんですが、女性が虐げられるシーンは中々ショッキング。
でもだからこそ、守れなかった悲しみや、怒りの気持ちが痛いほど伝わってきて特に凶さんには強く感情移入してしまいました。
最終回ではタイトルである『無限の住人』の真意も描かれ、万次さんが凛と共に過ごした時間の尊さを感じずにはいられません。
本当に濃厚で、どのお話も思い出深い、なんならトラウマになるほど記憶に強く刻まれた2クールでした。
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自分と境遇が似ていてこのキャラクターに感情移入した!
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