悪役。
悪いことをするという行為や見た目はもちろんのこと、アニメでは演技が非常に大切になってくる役です。
主人公を演じられる声優は多いですが、悪役を演じられる声優はそう多くない。
今回は本作最大の悪・尸良の狂気を演じきった奈良徹さんの熱演に感動したので、そこを中心に第20話「霏々─ひひ─」を振り返っていこうと思います。
『無限の住人-IMMORTAL-』とは
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
あらすじ
武士というものがまだ存在していた江戸の世——。
百人斬りと呼ばれた【不死身】の男がいた。
その男の名は「万次」。
万次は、父母を殺され復讐を誓う少女「凜」と出会う。
凜は万次に、復讐の旅の用心棒になってくれないかと言う。
初めは断る万次だが、凜に亡くした妹の面影を見た。
一人では危うい凜の姿に、仕方なく手を貸すことに決める。
しかし凜の仇は、剣の道を極めんとする集団——逸刀流。
それは、不死身の万次すら追いつめる凄絶な死闘の始まりを
意味していた。
スタッフ
原作:沙村広明『無限の住人』(講談社「アフタヌーン」所蔵)
監督:浜崎博嗣『TEXHNOLYZE』『STEINS;GATE』『テラフォーマーズ』
シリーズ構成:深見真『ゆるゆり なちゅやちゅみ!+』『ベルセルク』『revisions リヴィジョンズ』
キャラクターデザイン:小木曽伸吾『あいうら』『アルスラーン戦記』
美術監督:工藤ただし
色彩設定:篠原愛子
撮影監督:増元由紀大
3DCGディレクター:市川孝次
編集:長谷川舞
音響監督:清水洋史
音響効果:武藤晶子
音楽:石橋英子
アニメーション制作:ライデンフィルム
キャスト
万次:津田健次郎
浅野凜:佐倉綾音
天津影久:佐々木望
凶戴斗:鈴木達央
黒衣鯖人:花輪英司
閑馬永空:咲野俊介
乙橘槇絵:桑島法子
阿葉山宗介:ふくまつ進紗
天津三郎:秋元羊介
川上新夜:小原雅人
吐鉤群:中田譲治
百琳:林真里花
偽一:白熊寛嗣
尸良:奈良徹
真理路:小林親弘
宗理:関智一
八百比丘尼:真山亜子
吉乃瞳阿:釘宮理恵
八苑狼夷作:かぬか光明
馬絽祐実:福田賢二
綾目歩蘭人:草尾毅
果心居士:佐々木梅治
杣燎:田中有紀
荒篠獅子也:楠大典
目黒:佐古真弓
たんぽぽ:尾身美詞
御岳:三上哲
第20話「霏々─ひひ─」
「無限の住人-IMMORTAL-」第二十幕「霏々─ひひ─」予告
あらすじ
影久を追いかける凜と万次だったが、尸良に襲撃され凜が浚われてしまう。
救出へ向かう万次は、そこで尸良だけではなく練造と再会する。
凜を助けるため尸良と戦う万次。
しかし不可思議なことに万次を斬りつけたのは、失われたはずの尸良の左腕だった。
スタッフ
脚本:ケンゼン
絵コンテ:金井次朗
演出:髙田美里、武市直子
作画監督:清水勝祐、星野真澄、岡田正和、黒鳥剣、小澤円、山口光紀、前田義宏、前原薫、西川雅史、青野厚司、後藤孝宏、中井恵巳、緒方厚、門智昭、石川慎亮、吉田伊久雄
総作画監督:中智あすか、奥野倫史
ピックアップポイント
万次の手掛かりを追う尸良
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
吐様の元へ急ぐ目黒とたんぽぽ。
万次さんの話をしながら道中走っていると崖の上から飛び出してきたのは尸良。
吐様から、
「万が一遭遇して何か聞かれたらすべて答えよ。それがお前たちのためだ。」
と言われていた二人。
吐様をしてそこまで言わせる尸良の恐ろしさが伝わってきます。
凜を拉致する尸良
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
駕籠で移動する凛と万次さん。
少し止まっていた間に凛の駕籠が襲撃され、尸良に拉致されてしまいます。
わざと残された足跡を頼りに、尸良の元へ急ぐ万次さん。
尸良の目的は万次さんと楽しく戦うため。
それだけのために当然のように人を斬っていくのはさすがの異常性。
二人の命がけの戦いが始まります。
極寒の池に吊るされる凛
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
捕らえられた凛は、雪が降り積もる中の極寒の池の中に。
今まで様々な惨たらしい死にざまや処刑を描いてきた『無限の住人-IMMORTAL-』。
その中でも非常に想像しやすい苦痛を感じるこの描写は、見ているこっちまで寒気がしてきます。
こんな状況でも万次さんと練造の心配をする凛。
長い旅を通して本当に強い女性になりました。
血仙蟲の力を得た尸良
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
万次さんの左腕を移植し、血仙蟲の力を得た尸良。
本作品内でも"最悪"な人間に不死という"最強"の力が宿ってしまいました。
「万次さん、これでいったいどう負けるってんだ?」
不死の力を持ち、剣術も達者で、残虐非道。
しかも凛を人質に取られているという状況。
いつにも増して苦戦を強いられる万次さん。
戦闘を楽しむ尸良は万次さんに凜の居場所を教え、凜の元へ走らせます。
尸良を轢く凶さん
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
万次さんを追う尸良。
そこにタイミング悪く常陸を目指す凶さんが通りかかり、馬で轢いてしまいます。
さすが凶さんタイミングが悪すぎる。
助けようとするも尸良だと分かった瞬間、とどめを刺そうとする凶さん。
しかし不死の尸良は何事もなかったかのように凶さんの腕と足を潰して先に進むのでした。
馬で轢いたあげく、とどめを刺したのにその相手に腕と足を潰されるなんて悪夢にもほどがありますが、尸良の絶対的強さが端的に表されたシーンです。
凶さん可哀そう。
極寒の池に躊躇なく飛び込む万次さん
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
池に吊られた凜を見つけると一切の躊躇なく池に飛び込む万次さん。
旅の中で万次さんと凛の関係性もどんどんと深いものになっていきました。
腕の拘束を小刀で切るも、足に付いた重りで池の底に沈んでしまう凛。
小刀も紛失し、人工呼吸しながら凜を救おうとするも上手くいきません。
そんなところに駆けつけたのは目黒とたんぽぽ。
たんぽぽが凜を救い出し、目黒は尸良との戦闘に挑みます。
尸良 vs. 万次さん&目黒&凶さん
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
駆けつけた目黒は持ち前の速さで尸良を翻弄するも、不死の力の前に致命傷を負わせることはできず。
2人の戦闘中に凶さんも刀を投げて攻撃するも、まだまだピンピンしている尸良。
そしてついに、万次さんも合流しました。
「揃いも揃って俺に女をなぶられて殺されて、よく生きてられるよなお前ら、ああ?」
恋を殺された凶さんにとっても、万次さんにとってもとんでもない煽りです。
全編に渡ってですが、尸良を演じる奈良徹さんの演技が本当に凄い。
ここまで悪に染まれるのかというほど、邪悪な声を吐き出しています。
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
演技で言えば万次さんを演じる津田健次郎さんももちろん凄い。
特にその凄さを感じたのは馬乗りになって滅多打ちにされた後のセリフ。
「尸良、てめえだけは許さねえ。てめえ、だけは殺すと思っちゃいるがな、正直早いとこ楽になりてえって気持ちもあるんだよ。」
ここの"てめえ"と"だけは"の後に呼吸が入るんですよね。
普段アニメを見ていると呼吸が入ったとしても、文章に書いた時に句読点が入るであろう部分のみ。
ここで呼吸を入れるというのは津田健次郎さんの判断なのか、浜崎監督や清水音響監督の希望なのか。
この一呼吸だけで万次さんのセリフにとんでもないリアリティが生まれているなあと感じました。
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
一瞬のスキを見逃さず、尸良の目を潰す万次さん。
片腕一本分の血仙蟲しか身体に宿していない尸良は、他の部位の回復で精一杯で目の回復が間に合いません。
万次さんの脚を斬り、逃げ出す尸良。
あくまで泥臭い戦い方しかできない万次さんらしい戦闘です。
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
そんな尸良を再び馬で轢き、脚を斬り、万次さん後ろに乗せる凶さん。
「俺は無様に眺めていただけだから、あんたは主役でいなよ最後まで。」
と、剣を万次さんに託します。
かつては争っていた二人の共闘が熱く、凶さんの男らしさが溢れるカッコいいシーンでした。
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
ついにあの最悪な強敵、尸良を打ち倒したのです。
尸良の最期
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
痛覚さえ失った尸良。
最後は群がってくる野犬に肉片一つ残さず食い散らかされてその生涯を終えました。
四肢を切断してからのなぶり殺しや、女性を犯しながらの刺殺など、
目を覆うような残虐非道な行為の限りを尽くしてきた彼が迎えた結末もまた惨たらしいものでした。
戦闘の最中から死ぬ最後の瞬間まで、狂気じみた笑い声を上げ続ける尸良の異常性には自分も含め多くの視聴者が打ち震えたことでしょう。
奈良徹さんと言えば『ちはやふる』の肉まん君や、『カードファイト!! ヴァンガードシリーズ』の石田ナオキ。
そういうイメージでとらえていた自分にとっては本作の奈良徹さんの演技は本当に凄まじく、ここまで狂気を生み出すことが出来るのかと、演技の奥深さに改めて感動しました。
エンドクレジットも奈良徹さんの熱演を敬するかのように、一人別枠での記載となっていました。
©沙村広明・講談社/「無限の住人-IMMORTAL-」製作委員会
おわりに
裏切る系の悪役は石田彰さんか櫻井孝宏さんにやってもらえばいい。
そんなミームがネット界に広がるほど悪役の配役は偏りがち。
高笑いをはじめ、非常に難易度が高い悪役の演技を担っていく声優は今後どう変わっていくのでしょうか。
作画やストーリー、音楽はもちろん、演技の要素でも楽しめるアニメーション。
特に今回この第20話「霏々─ひひ─」は改めて演技の奥深さを感じられる奈良徹さんの素晴らしい演技が見られた回でした。
奈良徹さんの演技めっちゃ良かった!
自分は悪役声優ならこの人が好き!
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