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『羅小黒戦記〜ぼくが選ぶ未来〜』シンプルなストーリーに優しい空気感。迫力溢れる中国アニメーション作画は全人類必見の101分 ※ネタバレ注意【感想・考察・評価】

 『羅小黒戦記』

 中国原作中国制作の、正真正銘の中国アニメーションです。

 深夜アニメでも中国制作の作品は増えてきていますが、日本人が関わっていない、そして劇場版ともなればかなりレアかと思います。

 2019年9月に字幕版が公開されましたが、2020年11月より改めて日本語吹き替え版が公開されました。

 2019年のタイミングでは自分の情報収集が浅く、名前すら知らなかったので今回が完全な初視聴

 中国アニメーション進化に驚くと共に、愛おしい空気感がたまらず一瞬でドはまりしてしまった名作『羅小黒戦記〜ぼくが選ぶ未来〜』について語っていきたいと思います。

『羅小黒戦記〜ぼくが選ぶ未来〜』とは

luoxiaohei-movie.com


【本予告(90秒)】「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶ未来」 日本語吹替版 11月7日(土)全国公開(花澤香菜、宮野真守、櫻井孝宏ほか出演)

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©Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

あらすじ

 人間たちの自然破壊により、多くの妖精たちが居場所を失っていた。

 森が開発され、居場所を失った黒ネコの妖精シャオヘイ。

 そこに手を差し伸べたのは同じ妖精のフーシーだった。

 フーシーはシャオヘイを仲間に加え、住処である人里から遠く離れた島へと案内する。

 その島に、人間でありながら最強の執行人ムゲンが現れる。

 フーシーたちの不穏な動きを察知し、捕えにきたのだ。

 戦いの中、シャオヘイはムゲンに捕まってしまう。

 なんとか逃れたフーシーたちはシャオヘイの奪還を誓い、かねてから計画していた「ある作戦」を始める。

 一方、ムゲンはシャオヘイとともに、人と共存する妖精たちが暮らす会館を目指す。

 シャオヘイは、新たな居場所を見つけることができるのか。

 そして、人と妖精の未来は、果たして――

 

引用元: 『羅小黒戦記〜ぼくが選ぶ未来〜』公式HP ストーリーより

スタッフ

原作/監督:MTJJ
プロデューサー:叢芳氷、馬文卓
副監督:顧傑
脚本:MTJJ、彭可欣、風息神涙
作画監督:馮志爽、李根、周達炜、程暁榕、鄭立剛
美術監督:潘婧
撮影監督:梁爽
3D監督:周冠旭
音響監督:岩浪美和
音楽:孫玉鏡
音響制作:グロービジョン
制作会社:北京寒木春華動画技術有限公司

キャスト

シャオヘイ:花澤香菜
ムゲン:宮野真守
フーシー:櫻井孝宏
シューファイ:斉藤壮馬
ロジュ:松岡禎丞
テンフー:杉田智和
ジュイ:豊崎愛生
ナタ:水瀬いのり
キュウ爺:チョー
館長:大塚芳忠
花の妖精:宇垣美里(特別出演)

ピックアップポイント

上映前の驚き

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©Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

 本編に入る前に上映前に驚いたことを。

 映画を見に行く前日に予約したんですが、大きいスクリーンが満席

 自分が予約した段階で残り4席とかだったので、自分が見た上映回はおそらく1席も空いていなかったはず。

 月に2,3回映画を見に行く自分ですが、こんなことはまずありません

 1mmも知らない作品だったのでこんなに人気なのかと驚きましたが本編を見て納得させられました。

 

 そして面白かったのが中国の映画文化

 中国で制作されたアニメ映画を見るのはこれが初めてだったのですが、上映前に製作に携わった多くの会社名がスクリーンに並びました。

 日本の映画だと基本的に全てエンドテロップで流れますよね。

 製作に関わった全ての会社への感謝リスペクトは、文化の違いを感じると共に、非常に気持ちの良いものでした。

 

自然を破壊され居場所がなくなった妖精

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©Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

 主人公である黒猫の妖精・シャオヘイは、自然豊かな霊力溢れる森に暮らしていました。

 ところがある日、人間たちが森林を破壊し、住処を失ったシャオヘイ

 ただただその日を生き延びるため、人間から食べ物を奪ったり、日々懸命に生活をしますが、そんな妖精を良く思わない人間も。

 人間に襲われるシャオヘイですが、窮地のところを同じ妖精であるフーシーに助けられます。

 フーシーに連れられ、人里離れた遠くの島へやってきたシャオヘイ

 フーシーを始めとする他の妖精たちとともに、シャオヘイはまた平和な日々を取り戻します。

 

最強の執行人・ムゲン


「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶ未来」日本語吹替版 本編特別映像【アクションシーン】

 そんなシャオヘイ達の元に、最強の執行人・ムゲンが現れます。

 ムゲンは人間でありながら妖精より強く、霊力を操りシャオヘイ達を襲います。

 まともに戦っては勝ち目がない、フーシー達は霊道を通り、一時退散

 同時に霊道を閉じ、ムゲンシャオヘイは島に取り残されることになります。

 

 ここが初めての大規模戦闘シーンなんですが、とにかく作画が凄い

 元々線が少なめになっており、動きを重視したキャラクターデザインという雰囲気はあったかと思いますが、まさかこれほどとは。

 

 特筆すべきは何と言っても大胆なカメラワーク

 上のPVの10秒~12秒付近、ロジュが操る木の根が砕け散ると共に、カメラ側に素早く駆け寄りつつ反転するフーシー

 25秒~32秒付近、ムゲンの攻撃を回転しながら避けつつ、木性の霊力で攻撃。ムゲンは右側に来た攻撃を最小限の動きでよけ、髪がなびくと共に、画面を右手に追従させつつ左側に来た攻撃をいなします。

 衝撃と共に画面が反転ロジュが吹き飛び、フーシーも再び攻撃を避けながら反撃、木の根にフォローさせつつムゲンを回り込むような形で捕えます。

 

 これらの一連の動きが予備動作少なめで、しっかり慣性を感じさせつつシームレスに。

 見ていて終始気持ちの良い作画は、中国アニメーションのレベルの高さを感じます。

 日本で遥か昔から受け継がれてきた、独特なパース溜めモーションこだわりのエフェクトけれん味の利かせ方とはまた違った方向性で、素朴な気持ち良さがありますよね。

 流石に中国でもトップクラスの作品ではあるかと思いますが、うかうかしているとあっという間に日本のアニメーションも食い尽くされてしまうかもしれません。

 

ムゲンとシャオヘイの旅


「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶ未来」日本語吹替版 本編特別映像【食事シーン】

 人里離れた孤島に取り残されたムゲンシャオヘイ

 助かるためにはイカダにのって、本島へ向かうしかない。

 パパっとイカダを作るムゲンですがシャオヘイイカダに乗ろうとしません。

 シャオヘイにとってムゲンは、住処を奪った人間であると同時に、フーシー達を襲った極悪人

 信頼するどころか、一緒に行動することすらお断りです。

 それでも放っておくわけにはいかないムゲンは、シャオヘイを無理矢理イカダに乗せ、二人の旅が始まります。

 

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©Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

 ここから起こったことを端的に言ってしまえば、少しずつムゲン優しさに気付き、人間について理解を深めた、の一言。

 言葉にすればこれだけなんですが、この旅の途中の二人のやり取り空気感がとんでもなく愛おしい。

 隙さえあればすぐさま逃げ出そうとするシャオヘイと、それをしっかりと見守り捕らえるムゲン

 例えるなら、飼い始めでまだご主人になれてない猫がちょっとずつ慣れていく、そんな感じ。

 少しずつ心を許しているような、そう思ったら急にそっぽを向くような

 逃げないように捕らえるムゲンの霊力の使い方にも、シャオヘイに対する優しさが感じられます。

 この空気感の良さは、言葉ではどうやっても伝わる気がしないので、ぜひ映画館に足を運んでいただきたいです。

 

御霊系能力と空間系能力

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©Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

 旅の途中、この世界で使われる能力についてわかりやすい説明がありました。

 まずすべての生き物が、霊域という全てをコントロールできる自分だけの空間を自分の中に持っています。

 その霊域の中で生み出した力を外に発するのが能力です。

 

 能力にはいくつかの種類があり、一般的な能力者は御霊系能力を保有しています。

 ロジュフーシー木性の能力を持っており、を操ることが出来る。

 ムゲン、そしてシャオヘイ金性の能力を持っており、金属を操ることが出来ます。

 二人が少しずつ分かり合っていく過程で、シャオヘイ金性の能力をムゲンが鍛えているシーンも多く描かれました。

 それとは別に、空間系能力を保有している能力者も。

 シャオヘイ領界という非常に珍しい能力を持っており、霊域そのものを外部に解放することが可能です。

 霊域の中では全てをコントロールできるので、一定空間を思いのままに出来るというチート性能

 使い方次第で、世界が大きく歪んでしまいかねない能力です。

 

 そして残念なことに、フーシー達はシャオヘイの能力を利用し、人間のいない妖精だけの世界を取り戻す計画を建てていたのでした。

 

本島到着、そして襲われるシャオヘイ

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©Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

 長い海の旅を終え、本島に到着するムゲンシャオヘイ

 二人は妖精たちが伸び伸びと暮らす、館へ向かいます。

 館がある龍游という街では、600人以上の妖精が正体がバレないように人間と共存しており、シャオヘイ人間への怒りだけでなく、人間と妖精の共存について考えます。

 

 館へ向かう電車の中、シャオヘイ達はフーシーの仲間に襲われます。

 土を操るイエツと、人間を操るアクウ

 二人は、シャオヘイを取り戻すため、人間の犠牲も厭わずに攻撃してきます。

 ここの電車の攻防も見ごたえ抜群。

 ムゲンシャオヘイの共闘というシチュエーションも素晴らしく、あんなに人間が嫌いだったシャオヘイ人間を守るシーンも。

 人間に感謝され、照れるシャオヘイの姿に思わず涙がこぼれてしまいました。

 イエツアクウを倒したのも束の間、一瞬の隙をつかれ、シャオヘイフーシーの元へ連れて行かれます。

 

フーシー、領界発動

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©Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

 遥か昔、妖精だけが住んでいた森にやって来た人間。

 開発で多少森林を伐採することはあっても、かつては自然や妖精への敬意を持っていました。

 それが文明の進化と共に、自然破壊の速度は加速し、敬意も失われた。

 フーシー人間との共存の道を捨て、街から人間を追い出す計画を練っていたのでした。

 

 シャオヘイの領界の能力を奪い、発動。

 人間たちは館の妖精の転移の能力で、かろうじて街から逃げ出します。

 そんなフーシーを止めるため、ムゲンは領界内に突入。

 フーシーと互角の勝負を繰り広げるのでした。

 

 ここの二人の対決も本当に凄い。

 完全に能力を使いこなせてはいないとはいえ、何でも自由にできるフーシーの領界内で互角に渡り合うムゲンの圧倒的な強さを感じます。

 しかもムゲンの能力はあくまで金属を操る能力のみ。

 腕に巻いた手甲や、街にある金属の物質を巧みに操って戦う、創意工夫溢れる戦闘は見所と驚きの連続でした。

 

シャオヘイ覚醒、そしてムゲンとの共闘

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©Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

 領界の能力を奪われ、気を失っていたシャオヘイですがムゲンのピンチに覚醒。

 シャオヘイは、フーシーと歩む妖精だけの未来ではなく、ムゲンと歩む人間と妖精が共存する未来を選び、ムゲンと共闘します。

 ムゲンに教わった金性の霊力を最大限に発揮し、見事なコンビプレイを見せる二人に、この映画を通して育まれた絆の強さを感じるエモーショナルな展開。

 フーシーは最後の力で、自身をに変化させ命を絶ちます。

 それを見たキュウ爺たちが「木材になるだけ」「有料の公園になるかも」と言っていたのは非常に印象的。

 人間の進化は止まらないのだから共存するしかないというメッセージであると共に、人間を憎んだフーシーが最後は人間のためになるという皮肉さが含まれていました。

 

お別れ、師匠呼び

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©Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

 戦いに終止符が打たれ、新しい住処としてシャオヘイを館に連れてきたムゲン

 出てくる尺は非常に短い館ですが、雲の上に浮かぶ素敵なその建物は、桃源郷のよう。

 ムゲンは妖精より強い人間ということで、館で良く思われていないらしく、シャオヘイとはお別れをすることに。

 去ろうとするムゲンシャオヘイは声を掛けます。

 

 「僕も一緒についていっていい?」

 

 やっと手に入れた安住の地を捨ててでも、シャオヘイムゲンと過ごす未来を選びました。

 大切なのは、どこにいるかではなく、誰といるかなのです。

 申し出を快諾したムゲン

 シャオヘイムゲンのことを「師匠」と呼び、これから二人の執行人としての日々が始まるのでした。

 

日本語吹替版主題歌「Unity」/ LMYK


羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)スペシャルトレーラー|LMYK「Unity」

 日本語吹替版主題歌を担当するのは本楽曲でデビューとなったLMYKさん。

 作詞及び作曲も務めています。

 優しさにあふれたこの作品にぴったりの優しい声は、気持ちの良い余韻を与えてくれました。

 歌詞はグローバルに日本語と英語が複合していますが、どこを切り取ってもシャオヘイムゲンが育んだ固い絆を感じさせてくれる言葉が紡がれています。

 本編の後、二人はいったいどんな日々を送っているのか、ついつい想像が膨らんでしまう楽曲です。

 

おわりに

 事前情報も調べず、軽い気持ちで踏み込んだ一歩が深い深い底なし沼だった、そんな気にさせてくれる素晴らしい映画でした。

 特に作画の面でこれほど中国のアニメーションは進んでいるとは思っていませんでしたし、シンプルなデザインのキャラクターに101分でここまで心を動かされるとは。

 今年も終わりが近づいていますが、個人的には間違いなく2020年のアニメ映画の内、5本の指に入る作品です。

 既に現段階で上映2週目なので、気になる方はできるだけ早く映画館に足を運ぶことをおすすめします。

 

 わたしはこのキャラクターが好きだった!

 

 戦闘の作画良すぎてびっくりした!

 

 など意見や感想があればコメントしていただけると嬉しいです。

 

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