夜が、明ける。
本作のキャッチコピーとなっているフレーズですが、映画を見る前と見た後では全然印象が違います。
どんなにつらいことがあっても、夜が明けて明日になればきっと大丈夫。
そんなプラスのニュアンスだけではない"夜明け"を新曲の「夜が明ける」や、
春樹と秋彦と雨月の関係性と共に描いた名作、『映画 ギヴン』について語っていきたいと思います。
『映画 ギヴン』とは
© キヅナツキ・新書館/ギヴン製作委員会
あらすじ
“音楽がつなぐ青春グラフィティ 大人気TVシリーズ待望の続編!
高校生の上ノ山立夏は、佐藤真冬の歌声に衝撃を受け、
中山春樹、梶秋彦と組んでいるバンドにボーカルとして真冬を加入させる。
真冬加入後初のライブを成功させ、バンド「ギヴン」の活動が始動する中、立夏は真冬への想いを自覚し、ふたりは付き合い始める。一方、春樹は長年密かに秋彦に想いを寄せていたが、秋彦は同居人のヴァイオリニスト・村田雨月との関係を続けていて・・・。
スクリーンで、春樹と秋彦、雨月の恋が軋んで動き出す――!
スタッフ
原作:「ギヴン」キヅナツキ(新書館「シェリプラス」連載中)
監督:山口ひかる
脚本:綾奈ゆにこ『電波女と青春男』『アイドルマスター SideM』『BanG Dream!』
キャラクターデザイン:大沢美奈『学園ベビーシッターズ』
総作画監督:永田陽菜、二宮奈那子
美術設定:綱頭瑛子
美術監督:岡本綾乃/大西達朗
色彩設計:加口大朗
撮影監督:芹澤直樹
CG監督:水野朋也
編集:伊藤利恵
音響監督:菊田浩巳
音楽:未知瑠『終末のイゼッタ』『三ツ星カラーズ』『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』
アニメーションプロデューサー:比嘉勇二/秋田信人
アニメーション制作:Lerche
配給:アニプレックス
キャスト
佐藤真冬:矢野奨吾
上ノ山立夏:内田雄馬
中山春樹:中澤まさとも
梶 秋彦:江口拓也
村田雨月:浅沼晋太郎
ピックアップポイント
テレビシリーズでは描き切れなかった秋彦と雨月の関係性
© キヅナツキ・新書館/ギヴン製作委員会
かつてヴァイオリン奏者として出会った秋彦と雨月。
雨月の圧倒的な音楽センスやその独特な雰囲気に秋彦は惚れこんでいきます。
ある時、秋彦の両親が離婚し別居、行く当てのなくなった秋彦は雨月が一人で住んでいる、防音の行き届いた無機質な白い壁に包まれた家に同居することになりました。
仲睦まじく日々を過ごす二人ですが、少しずつ違和感を抱き始めます。
あんなに楽しかったはずのヴァイオリンは、秋彦が雨月と対等な男でいるためだけの道具へと変わっていってしまいました。
お互いの存在がお互いにプレッシャーをかけているだけだと分かった二人は別れることを決意、しかしダラダラと同居と肉体関係は続いて行くのでした。
昨日書いた『海辺のエトランゼ』とは大違いの大人のドロドロ感は非常に扇情的。
秋彦が家から出ていくよう、雨月は別の男と家で寝たり、非常に退廃的な雰囲気が漂っています。
春樹から秋彦への想い
© キヅナツキ・新書館/ギヴン製作委員会
一方でテレビシリーズでも少しだけ描かれた春樹から秋彦への想い。
バンドとしての形を保つため、春樹はその想いを押さえつけていました。
だからこそ春樹の悩みは尽きません。
どんどんと音楽の知識が増え、センスが磨かれていく真冬と立夏。
ドラムの技術は抜群で、女の人と寝たり、順風満帆そうに見える秋彦。
自分以外のみんながキラキラして見える春樹はアイデンティティを失いかけていました。
そんな時、雨月の家から逃げてくるようにやってきた、秋彦との同居生活が始まります。
秋彦は春樹が思っているよりも数倍努力家で、時間があればドラムやヴァイオリンの練習を欠かしません。
そんな秋彦の姿に春樹の想いは募る一方。
秋彦にとっても春樹との共同生活は本当に楽しいもので、バンド全体の仕上がりもどんどん良くなっていくのでした。
終電を無くした朝の帰り道
© キヅナツキ・新書館/ギヴン製作委員会
ある日のバンドの全体練習の後、演奏するのが楽しくてたまらない二人は個人練習をすることに。
張り切り過ぎて気が付いたら朝の3時まで練習していました。
終電を無くし、二人は川辺を歩いて自宅に戻るのですが、このシーンがめちゃくちゃ青春を感じて大好きです。
他愛もない会話をしたり、トンボを捕まえたり、色々寄り道しながら進む二人だけの時間。
道中で始発に追い抜かれたりして、素直に始発が動くのを待っていた方が効率は良かったのですが、それが時間の無駄だからこそ、二人が過ごした楽しい時間は非常に尊いものに感じました。
川辺を歩く二人を祝福するような朝日の当たり方もとても美しかったです。
「夜が明ける」
本作最大の見所は何と言っても新曲「夜が明ける」のライブシーン。
歌詞に悩んでいた真冬は、雨月から直接聞いた秋彦への想いを歌にします。
かつては自分の気持ちを歌うだけで精一杯だった真冬も大きく成長しました。
演奏も歌詞も歌声も、思わずボロボロ涙がこぼれる程エモーショナル。
"代り映えのない 白い壁"というような、雨月の防音室をイメージしたワードや、
"春に咲いて 秋に枯れる"という春樹と秋彦をイメージしたワードも。
眠れなくても 夜は明ける
繋いだ手も やがて離れる
途方に暮れて 泣き喚いても
やがて泣き止む
君がいなくても 生きてゆけるけど
愛されなくても 君に会いたい
ほらもうすぐ 夜が明ける
夜が明ける
出典:「夜が明ける」/ ギヴン
"夜が明ける"という単語をプラスのニュアンスでもマイナスのニュアンスでも捉えられる形になっているのが非常に素敵。
前述した"終電を無くした朝の帰り道"が描かれたからこそ、視聴者にとっても夜明けのイメージが大きく広がったことでしょう。
"愛されなくても 君に会いたい"というワードは『海辺のエトランゼ』にも出てきていて、凄い運命的なものを感じました。
ちなみに現在、『映画 ギヴン』と『海辺のエトランゼ』のコラボPVも配信されていますのでぜひこちらも併せてご覧ください。
変わっていく秋彦、そして…
© キヅナツキ・新書館/ギヴン製作委員会
「夜が明ける」のライブをきっかけに、また気持ちを新たにした秋彦。
雨月ときっぱり別れて荷物も引き上げ、春樹の家からも出て一人暮らしを始めます。
そしてヴァイオリンのコンクールにも出場。
失っていた泥臭い情熱を秋彦は取り戻したのです。
春樹は自分から離れてどんどん変わっていく秋彦に不安を覚えますが、
「お前に見合う男になりたかったから…」
と秋彦は素直な気持ちを春樹に告げ、二人は見事結ばれることになりました。
真冬と立夏、春樹と秋彦、強い絆で結ばれた4人ならきっとこれからもどんどん先に進んでいける、そう確信させてくれる素晴らしい映画の締め方でした。
「僕らだけの主題歌」
センチミリメンタル 『僕らだけの主題歌』 Music Video
エンディングテーマを飾るのはセンチミリメンタルさんの「僕らだけの主題歌」。
作詞、作曲、編曲も全てセンチミリメンタルさんが務めています。
テレビシリーズの「キヅアト」も名曲でしたが、またこちらもとんでもない楽曲。
テーマとしては"前に進むための離別"でしょう。
まさに秋彦と雨月の関係性にぴったり。
"夜明け"というワードもしっかり入っていて、流石バンドサウンドディレクションまで担当するほどこの作品と深いつながりのあるセンチミリメンタルさんだなあと感動です。
僕は行くよ
ねぇ 見ててよ
あなたより大事なもの探してくるよ
何よりも大事なあなたのために
会いたいとき 抱きしめたいとき
思い出す記憶を 過ごした時間を
この心の背もたれにして
何回も歌うよ 大事な想いを
僕らだけの 主題歌にして
出典:「僕らだけの主題歌」/ センチミリメンタル
1フレーズ1フレーズ、想いが詰まりに詰まったとんでもない歌詞ですが、
特に"心の背もたれ"という表現は可愛らしくてめちゃくちゃ好きです。
「夜が明ける」が凄い曲過ぎてどんなエンディングテーマが来ても勝てる気がしないと思っていましたが、秋彦視点の歌詞にボロボロにされました。
おわりに
やっぱり音楽の力って凄いですよね。
画面とセリフだけで各キャラクターの感情はある程度把握できますが、想いを歌に乗せることで感情が何十倍、何百倍に膨れ上がって直接心に響いてきます。
「夜が明ける」と「僕らだけの主題歌」は僕のアニソン人生の中でも忘れられない楽曲になりました。
この劇場版を見てはじめて『ギヴン』の物語が完成されると思います。
テレビシリーズしか見ていない人はぜひ、この劇場版もご覧になってみてください。
「夜が明ける」でボロボロ泣いた!
これからの『ギヴン』も気になる!
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今後もアニメに関する記事を毎日投稿していきますので、ぜひご覧ください。
また次の記事で!