存在意義。
人間は社会的な生き物なので、誰からも必要とされずに生きていくのは非常に難しいです。
家族、友達、恋人。
色々な視点から人と人との繋がりを描く『フルーツバスケット』もいよいよ終盤。
今回は由希の過去が明らかになる第21話「あったんだ。確かに」について語っていきたいと思います。
『フルーツバスケット』とは
TVアニメ「フルーツバスケット」2nd season第2クールPV
©高屋奈月・白泉社/フルーツバスケット製作委員会
あらすじ
透が紫呉の家に住み始めてから一年が経とうとしていた。
由希と夾だけでなく草摩家の皆とも交流を深めてきたが、
今も気になるのは忌まわしき『呪い』の正体。
進むべき道、決められた宿命、
終わりなき――十二支の――宴を前にして
由希は、夾は、そして透は何を想い、何を決意するのだろうか……。
スタッフ
原作・総監修:高屋奈月「フルーツバスケット」(白泉社・花とゆめCOMICS)
監督:井端義秀『進撃!巨人中学校』『劇場版 フリクリ プログレ』
シリーズ構成:岸本卓『銀の匙 Silver Spoon』『ジョーカー・ゲーム』『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』
キャラクターデザイン:進藤優『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』『マクロスΔ』
美術監督:神山瑤子
色彩設計:菅原美佳
撮影監督:設楽希
編集:肥田文
音響監督:明田川仁
音楽:横山克『フリージング』『亜人ちゃんは語りたい』『天狼 Sirius the Jaeger』
音楽制作:トムス・ミュージック
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
製作:フルーツバスケット製作委員会
キャスト
本田透:石見舞菜香
草摩由希:島﨑信長
草摩夾:内田雄馬
草摩紫呉:中村悠一
草摩楽羅:釘宮理恵
草摩紅葉:潘めぐみ
草摩潑春:古川慎
草摩はとり:興津和幸
草摩綾女:櫻井孝宏
草摩杞紗:上田麗奈
草摩燈路:大地葉
草摩利津:河西健吾
草摩依鈴:豊崎愛生
草摩紅野:梅原裕一郎
草摩慊人:坂本真綾
草摩藉真:森川智之
魚谷ありさ:種崎敦美
花島咲:佐藤聡美
本田今日子:沢城みゆき
真鍋翔:江口拓也
倉伎真知:加隈亜衣
第21話「あったんだ。確かに」
あらすじ
由希がまだ誰にも伝えていない、情けなくてカッコ悪いこと……
それは初めて慊人と会った時まで遡る。
物心ついた頃には、神様に一番近い存在として慊人の側にいた。
しかし、ある日を境に否定的な言葉を浴びせられるようになる。
友達も去った。
母親からも見放された。
そんな日々の中で、由希の心のどこかが弾けて……。
スタッフ
脚 本:岸本 卓
絵コンテ:渡辺正樹
演 出:平向智子
総作画監督:番 由紀子、秋山由樹子、竹本佳子、重國浩子、徳永さやか
作画監督:小美戸幸代、森 七奈、秋月 彩、能條理行、本田創一、山田香央里
ピックアップポイント
由希と慊人が初めて会った日
©高屋奈月・白泉社/フルーツバスケット製作委員会
草摩家にやってきた若き日の由希。
ここで由希は慊人と初めて出会います。
会いたかったような、会いたくなかったような。
抱きしめたいような、逃げ出したいような。
心の奥深くを渦巻く感情に思わず涙する由希。
他の十二支憑きも慊人と初めて会った時は涙を流したとのこと。
草摩一族における慊人という抗うことのできない絶対的な存在を実感します。
ここから由希と慊人の関係性が始まります。
壊れてしまった慊人
©高屋奈月・白泉社/フルーツバスケット製作委員会
最初の頃は仲良く遊んで一緒に過ごしていた由希と慊人。
時間も忘れて一日中遊び続けてしまうほど。
ところがある日、慊人は壊れてしまいます。
「この世は、僕の世界は真っ暗だ。だったら部屋もそれにふさわしい色にしなくちゃだめだよね。」
部屋の壁を真っ黒に塗りだす慊人。
「僕はいらない存在なんかじゃない。僕は選ばれた存在で、必要とされる存在で、いるべきだからここにいる。お前と一緒なんかじゃない!お前は僕のおもちゃなんだよ!」
慊人は由希が親から捨てられた存在であること、自分がいなきゃ誰からも必要とされない存在であることを自覚させます。
由希は最も慊人に近い鼠憑きだからこそ、良くも悪くも他の十二支憑きからも特別視されています。
由希と夾の出会い
©高屋奈月・白泉社/フルーツバスケット製作委員会
「鼠のお前が全部悪いんだ!お前のせいで、お前のせいで全部!お前なんかこの世からいなくなればいいんだ!」
十二支に入れなかった猫憑きの夾。
母親の自殺等、その境遇を考えれば由希への怒りも納得ですが、由希自身は自分の境遇を恨んでいるという誰も幸せにならない世界。
夾からの強烈な悪意を受け母親に救いを求めるも、母は自分のことを愛していない。
毎日慊人から否定の言葉を聞かされ続け、誰からも必要とされていない自分に絶望し、由希は深い闇の底へと落ちていきます。
ふと見える希望の光
©高屋奈月・白泉社/フルーツバスケット製作委員会
他の十二支憑きとは違う良い学校に通っていた由希。
他人から否定されることが恐ろしく、誰とも関わらないように学校生活を送っていました。
ところがある日、「一緒にサッカーをしよう!」と声をかけられます。
初めてできた友達と楽しく遊ぶ由希。
自分の存在意義を感じられる日々は由希にとって非常に輝かしい毎日でした。
隠蔽される友達の記憶
©高屋奈月・白泉社/フルーツバスケット製作委員会
楽しい日々も束の間、遊んでいる最中に女の子に抱き着かれてしまい、由希は鼠の姿になってしまいます。
草摩一族の秘密を隠すため、友達の記憶を隠蔽。
再び由希は独りぼっちになってしまいます。
一瞬でも希望の光が見えてしまったからこそ、その友達の記憶からもいなくなってしまった自分というのはあまりに辛く、見ている我々も心を痛めずにはいられません。
夾との再会、白い帽子の伏線
©高屋奈月・白泉社/フルーツバスケット製作委員会
風に運ばれ、由希の足元に落ちる白い帽子。
その持ち主はあの夾でした。
由希を憎む夾はその帽子を拾うことなく帰ってしまいます。
由希にとっての夾は抱きしめてくれる両親、帰りたいと願う家、みんなが笑っている場所、みんなが離れていかないような自分、由希が欲しいと思っているすべてを持っている存在。
そんな夾の境遇への嫉妬・憧れから、由希はその白い帽子を大切にするのでした。
十二支の中で一番神様に近い由希と一番神様から遠い夾。
それぞれがそれぞれに強い想いを抱き、二人とも深く傷つきながらその思いが交差することのない日々は悲しい運命としか言いようがありません。
絶望的な状況から駆け出した由希
©高屋奈月・白泉社/フルーツバスケット製作委員会
持病の気管支炎と慊人からの精神攻撃。
身体も心もボロボロになってしまった由希は感情が爆発し、夜明けの街へと駆け出します。
そんな時にたまたま出くわしたのが、帰ってこない娘の姿を心配する、とある母親の姿。
こんなにも子供のことを心配してくれる母親がいるということに驚きながら、由希は道中見かけた女の子の元へ急ぎます。
透に渡る白い帽子
©高屋奈月・白泉社/フルーツバスケット製作委員会
今まで透目線で描かれてきた、白い帽子の男の子。
自分を救い出してくれたその子を非常に大切に思っていると、今までも何度も描かれてきました。
そして今回描かれたのは由希目線のお話。
迷子になった透を救いながらも、自分を必要としてくれる透に、由希自身が救われる思いだったのです。
「そうだ、僕は知ってる。誰かが僕を必要としてくれた時は、瞬間は確かにあった。もう誰も覚えていなくても、君が忘れてしまってもあったんだ、確かに。」
きっと、この出会いが無ければこの二人が数年後にまた再会することもなかったでしょう。
原作未読の自分からすると、この帽子が夾のものなのか由希のものなのかいまいちピンと来ておらず、この話を見て点と点が繋がった思いでした。
自分が大好きで記事にもした第7話「スイカ割り大会を始めるのよーっ」の告白の裏にはこれほどまでの想いがあったとは…
そして現在
©高屋奈月・白泉社/フルーツバスケット製作委員会
「この世は光に包まれた世界なんかじゃない。でも、それだけじゃない。暗闇だけじゃない。それだけじゃないんだ。」
透との出会いはまさに由希にとって希望の光でした。
それでも再び深い闇の中に落ちて行ってしまった由希。
普通のフィクション作品であれば希望が一つさえあればどんな逆境も乗り越えてしまうかもしれませんが、『フルーツバスケット』はこういった描写が非常に繊細です。
たった一つの出来事だけで、由希の人生・運命は変えられません。
再び透と再会し、親身に話を聴いてくれたり、優しい笑顔で微笑んでくれたり。
何度も何度も透が辛い気持ちを真正面から受け止めてくれたからこそ由希は深い闇の底から抜け出せたのです。
「愛しい人。あの空の様に近く、遠い、お母さんみたいに。」
この21話まで見て初めて、どうして第7話の告白で由希が泣いていたのか、あの涙に隠された真意が伝わってきます。
今までずっと他人から必要とされてこなかった由希。
惜しみなく優しさを注いでくれた唯一無二の存在、由希にとっての透は、
ずっとずっと欲しくて止まなかったお母さんのような存在だったのです。
おわりに
ちょくちょく描かれることはありながらも、完全には全容を把握できていなかった由希の過去。
知れば知るほど由希と夾と透の3人の関係が愛しくてたまりません。
そしてまだ謎に包まれる慊人という存在の全容。
残された数話で『フルーツバスケット』が完結するというワクワク感とハラハラ感でいっぱいです。
第7話とのつながりでボロボロ泣いた!
このシーンにはこういう意味があるんですよ!
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また次の記事で!