鬱アニメ。
見れば見る程辛い気持ちになるのに、何故か見る手が止まらない不思議なジャンルです。
首が飛んで、血しぶきが吹き出るぐらいじゃちっとも鬱にはならないんですが、悲劇的な出来事をしっかりと描き切る作品や、逃れられない辛すぎる運命を見るとやはり心が落ち込みます。
一人一人の「死」や、仲間との戦い、死ぬとわかっていての戦闘など辛い運命がしっかりと描かれ、鬱要素も、ロボットアニメとしても多くのファンからの支持を受けている本作。
2020年の再放送を見て改めて感じた『蒼穹のファフナー』の魅力について語っていきたいと思います。
『蒼穹のファフナー』とは
あらすじ
「あなたはそこにいますか・・・」
日本の片隅に浮かぶ平和で穏やかな島。見渡す限り蒼い空。見渡す限り広がる碧い海・・・少年、少女たちにとっては今日もいつもと変わらぬ一日がはじまるはずだった。
「あなたはそこにいますか・・・」
少年、少女たちはある日突然、このメッセージを受け取った。「YES」と応えたその瞬間、一筋の光が蒼穹をよぎった。光はあまりに美しく、だがあまりに過酷な現実へと誘う戦光でもあった。
突如として現れる敵。突然すぎる現実。その大きな波に翻弄されることになる。
人は生きるために如何に応えるべきだったのか・・・
そして少年・真壁一騎は、「生きるため」そして「今から逃げるため」にファフナーに乗り込むことを決意する。
スタッフ
原作原作:XEBEC
企画:大月俊倫・下地志直
監督:羽原信義『D・N・ANGEL』『サルゲッチュ〜オンエアー〜』『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』
助監督:山岡信一『ザ・サード ~蒼い瞳の少女~』『PandoraHearts』
文芸統括:冲方丁『シュヴァリエ 〜Le Chevalier D'Emon〜』『マルドゥック・スクランブル』『攻殻機動隊 ARISE』
シリーズ構成:山野辺一記『おねがいマイメロディ』『アラド戦記 〜スラップアップパーティー〜』
キャラクターデザイン:平井久司『スクライド』『機動戦士ガンダムSEED』『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』
メカ・プロップデザイン:鷲尾直広『宇宙のステルヴィア』『そらのおとしもの』『ガンダムビルドダイバーズ』
色彩設定:関本美津子
音響監督:三間雅文
美術監督:小山俊久
撮影監督:広瀬勝利
3D監督:本間潤樹
モニター設計:中野剛
音楽:斉藤恒芳『電脳コイル』『プリティーリズム・レインボーライブ』『朝霧の巫女』
プロデューサー:中西豪、千野孝敏、能戸隆
キャスト
真壁一騎:石井真
遠見真矢:松本まりか
皆城総士:喜安浩平
羽佐間翔子:松来未祐
春日井甲洋:入野自由
要咲良:新井里美
小楯衛:斎賀みつき
近藤剣司:白石稔
皆城乙姫:仲西環
カノン・メンフィス:小林沙苗
日野道生:堀秀行
真壁史彦:田中正彦
皆城公蔵:中田譲治
羽佐間容子:葛城七穂
春日井正浩:河相智哉
要誠一郎:小山力也
要澄美:石川静
小楯保:高瀬右光
近藤彩乃:玉川紗己子
遠見弓子:ゆかな
遠見千鶴:篠原恵美
狩谷由紀恵:沢海陽子
おすすめポイント
放送開始から16年経った今も続く超大作の原点
第1期、あるいは無印と呼ばれる本作の放送が始まったのは2004年の7月。
今から16年前のことです。
そして2020年10月現在、全12話予定のOVAシリーズ『蒼穹のファフナー THE BEYOND』の第7話から第9話が11月に先行上映されることが決まっています。
かつて学生だった人は立派なお父さんに、お父さんだった人はそろそろ孫が生まれてもおかしくないほどの年月が経っています。
しかもこの作品の凄いところは、無印から『蒼穹のファフナー THE BEYOND』まで時系列がしっかり繋がっており、無印のキャラクターや設定が最新のお話までしっかり生かされているというところ。
シリーズ作品でたまに言われる、
過去の作品は見なくて大丈夫!
ということは、『蒼穹のファフナーシリーズ』においては、ほぼありません。
見たことがない人からすると、
「そんな長い期間追い続けている人が本当にいるの?」
と思われるかもしれませんが、今もなお多くのファンに愛され続ける大人気シリーズです。
第1期である『蒼穹のファフナー』はシリーズの根本となる設定が緻密に描かれており、後のシリーズを見るための基礎知識の土台となる作品でありながら、
改めて見返すことで新たな発見もある、何度も何度も楽しめる全26話になっています。
自分自身も今回見たのが多分3回目だったと思うのですが、忘れていた細かな設定を思い出したり、懐かしい雰囲気を再度確認することが出来ました。
2000年代を代表するアニメーター・平井久司さんによるキャラクターデザインや、長い腕や関節が特徴の鷲尾直広さんによるメカニックデザイン、そのデザインをしっかりと生かした作画や撮影、3DCGなど映像もまた美しい。
最新のロボットアニメと比較して遜色なく、とまでは言えませんが今見ても見ごたえ十分な映像は本当に16年前の作品なのかと疑うほどです。
平和、仲間、死、戦う理由、自己、存在理由
「ファフナー」、「フェストゥム」、「ゴウバイン」、「同化現象」、「蒼穹作戦」、「ミール」等々『蒼穹のファフナーシリーズ』でしか聴くことのない単語が目白押しの本作。
非常に細かいところまでこだわり抜かれた設定は、知れば知るほどより作品全体を楽しめるものばかり。
ただその設定をブログの一記事で紹介することは到底不可能なので、今回は大きなテーマの部分の話をします。
竜宮島という孤島で平和な日々を送っていた人々のところに、突然現れた敵。
敵は島を一瞬にして地獄に変えてしまいます。
子供たちは何もわからないまま、「思考制御・体感操縦式」有人兵器・ファフナーに乗せられ、敵と戦うことになるのです。
戦えば死ぬとわかっていても戦わなければならない状況や、かつての仲間との戦い。
戦えば戦うほど己の肉体は蝕まれ、仲間も見捨てなければならない。
そこまでしてどうして自分たちは戦わなくてはいけないのか、いったい自分は何のために存在しているのか、そもそも自分とは何なのか。
熾烈な戦いを通して、葛藤し、悩み、もがき苦しむ少年・少女の姿が非常にリアルに描かれます。
果たして自分がその立場にいた時、自分ならどういう選択をするだろうか。
架空のお話のはずなのに、深く感情移入せずにはいられない心理描写はあっぱれとしか言いようがありません。
もちろん、全26話ずっと戦い続けているわけではありません。
時には平凡な学生生活が描かれることもあれば、亡くなった人を悼み、祈りを捧げるお話もあります。
一人一人のキャラクター、そして一人一人の死を大切に扱うからこそ、人が死んだときの絶望感がより際立ちます。
特に無印は平和な回と人が死ぬ回のギャップがシリーズ全体で見ても非常に大きく、トラウマになるレベルで絶望する回も。
ほのぼの日常アニメを見たい人には絶対おすすめできない作品ですが、人の死を通して伝わってくるメッセージの強さはピカイチ。
日本を代表するロボットアニメシリーズであり、鬱アニメシリーズでもあります。
全てはここから始まった、angelaによる"ファフソン"
『蒼穹のファフナーシリーズ』にまつわる楽曲、通称"ファフソン"。
なんとその楽曲数、2020年10月現在27曲。
その全てをアニソンアーティスト・angelaが担当しているというアニメ史を見ても未曽有の事態です。
そんな"ファフソン"も一番最初はこの作品から。
"ファフソン"の代表曲ともいえる『蒼穹のファフナー』オープニングテーマは、
「Shangri-La」/ angela
「蒼穹のファフナー」ノンクレジットOP:angela『Shangri-La』【公式】
作詞:atsuko 作曲:atsuko、KATSU 編曲:KATSU
作詞はangelaのボーカル、atsukoさん。
作曲は同じくatsukoさんと、ギターのKATSUさん。
編曲はKATSUさんが担当。
"ファフソン"は基本的に全曲この構成になっています。
もはや、『蒼穹のファフナー』という作品を超えて、アニソンの代名詞となっている本楽曲。
「Shangri-La」を知っているけれど、『蒼穹のファフナー』は見たことがないという人の方がもはや多いぐらいかもしれません。
「Shangri-La」の意味は楽園。
無印では、登場人物たちの会話でまさにこの言葉を使うシーンがあります。
「俺たちはどこへ行くんだ?」
「楽園だよ。」
他にも第1話のサブタイトルは「楽園〜はじまり」ですし、「Arcadian Project」という作中内の計画に使われている"Arcadian"という単語は「楽園」を意味する「Arcadia」から来ています。
竜宮島にある喫茶店の名前も「楽園」で、まさにこの作品を象徴するタイトルと言って良いでしょう。
では、「楽園」とは何なのか。
定義としては、"苦しみが無く、楽しさに満ち溢れた場所"となります。
僕等は目指した Shangri-La
欲望は抑えきれずに
空想にまみれた 「自由」を求め続けた
今なら言えるだろう 此処がそう楽園さ
さよなら蒼き日々よ
出典:「Shangri-La」/ angela
「自由」が溢れた「楽園」を求め続ける主人公たち。
でも、彼らは気付きます。
自分たちが住んでいる竜宮島こそが、本当の楽園なんだと。
唯一生き残った人類が住むこの島で、親からの愛情をいっぱい受けて育ってきた彼ら。
戦えば戦うほど、世界の真実を知れば知るほど、竜宮島以上の楽園は考えられません。
その竜宮島、楽園を守るために、蒼き日々、すなわち戦争の無い日々を捨て、敵との戦いに身を投じる。
そんな『蒼穹のファフナー』の世界観を端的に表した非常に切ない歌詞になっています。
1番のAメロ・Bメロはフェストゥム因子を埋め込まれた、少年少女の葛藤を、
2番のAメロ・Bメロは真壁一騎の選択を歌っており、話数が進めば進むほどその歌詞の重みが増していきます。
『蒼穹のファフナー』という作品を知らなくても愛される、素晴らしいアニソンですが作品を知れば知るほどこの曲の重みが伝わってくるのです。
エンディングテーマは、
「Separation」/ angela
「蒼穹のファフナー」ノンクレジットED:angela『Separation』【公式】
作詞:atsuko 作曲:atsuko、KATSU 編曲:KATSU
この楽曲には別アレンジがあり、もう一曲は「Separation[Pf]」という名前になっています。
Pfはピアノフォルテの略で、ピアノバージョンという意味です。
「Separation」の意味は離別。
大切な人が次々といなくなる本作に、これほどぴったりな楽曲はないでしょう。
「Separation[Pf]」は、2番の歌詞が使われ、かつ仲間との離別があった際に流れるというまさにトラウマソング。
2番の冒頭の歌詞、「あたし行かなくちゃ」を聴くだけで頭を抱えてしまうほどです。
1番の歌詞は大切な人を亡くしてしまった人、2番の歌詞は死んで行く人の視点で描かれています。
亡くなった人の温度が伝わってくるような1番の歌詞からは、遺された人の強い想いが。
その先の未来が絶たれたという絶望が伝わってくる2番の歌詞からは途方もない悲しみと遺志が伝わってきます。
『蒼穹のファフナー』のエンディングテーマはこの曲以外ありえなかった。
そう言って過言ではない、このエンディングまで含めて一つの作品を形作っていた素晴らしい楽曲です。
激しく強い決意を歌うオープニングテーマと、しっとりと悲しみに暮れるエンディングテーマ。
この構成は『蒼穹のファフナーシリーズ』で受け継がれていく流れとなります。
おわりに
10年ぶりぐらいに見て、ファフナーに乗るぐらいの年齢だった自分も、もう流石にこの作品に出演したら大人に分類されるぐらいの年齢になってしまったなあと実感しました。
子供はいませんが、自分の子供にファフナーに乗るよう招集通知が届いたりしたら、きっと泣き崩れてしまうでしょう。
人生経験によって見え方も全然違う作品なのでまた10年後ぐらいに再度見たい気持ちでいっぱいです。
2020年秋からは『蒼穹のファフナー EXODUS』が再放送予定。
これからも『蒼穹のファフナーシリーズ』から目が離せません。
このシーンは特に鬱だった!
『蒼穹のファフナー』よりもこの作品の方が鬱だと思う!
など意見や感想があればコメントいただけると嬉しいです。
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今後もアニメに関する記事を毎日投稿していきますので、ぜひご覧ください。
また次の記事で!