心が、洗われるようなボーイズラブ。
本作のキャッチコピーとなっているフレーズですが、まさにこの通り。
海辺の家を舞台にした見ているだけで心洗われるような背景と、甘酸っぱくてさわやかな美しい男の子二人による美しいボーイズラブ。
20代一般男性が見ても泣いて笑って楽しめた名作、『海辺のエトランゼ』について語っていきたいと思います。
『海辺のエトランゼ』とは
©紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会
あらすじ
『海辺のベンチでひとり佇む少年。そんな彼が無性に気になった』
小説家を目指す青年・駿は、
海辺の少年・実央に思わず声をかけた。
――「ちょっと、君!」それをきっかけに、 実央も駿のことを意識し始めるが、
彼は島を離れなくてはならなかった。
「はやく大人になりたい」
そう言い残し、実央は去っていく。3年後、実央は駿のもとに戻ってきた。
少しだけ大人になって。 はにかんだ笑顔を浮かべながら。叶わないはずの想いが、通じあったとき、
止まっていた時間が動き出す。
スタッフ
原作:紀伊カンナ 「海辺のエトランゼ」(祥伝社on BLUE comics)
監督・脚本・コンテ:大橋明代『サクラカプセル』
キャラクターデザイン・監修:紀伊カンナ
総作画監督:渡辺真由美『吉永さん家のガーゴイル』『フリージング』『真剣で私に恋しなさい!!』
エフェクト作画監督:橋本敬史
美術監督:空閑由美子(STUDIOじゃっく)『メルクストーリア 無気力少年と瓶詰め少女』『異世界チート魔術師』
色彩設計:柳澤久美子
撮影監督:美濃部朋子
編集:坂本雅紀(森田編集室)
音楽:窪田ミナ『カレイドスター』『フォトカノ』『マクロスΔ』
音楽制作:松竹音楽出版
音響監督:藤田亜紀子
音響効果:森川永子
録音調整:林淑恭
音響制作:HALF H・P STUDIO
アニメーション制作:スタジオ雲雀
配給:松竹ODS事業室
製作:海辺のエトランゼ製作委員会
キャスト
橋本 駿:村田太志
知花実央:松岡禎丞
桜子:嶋村 侑
絵理:伊藤かな恵
鈴:仲谷明香
おばちゃん:佐藤はな
ピックアップポイント
圧倒的背景の美しさ
©紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会
ストーリーに触れる前に一番驚いたのは背景の美しさ。
沖縄の開放的な海辺の家が舞台の中心になりますが、まるで見てる我々がそこに住んでいると錯覚するほどリアリティさと、美しすぎる幻想的な部分が共存する背景でした。
木の温かみが伝わってくるほど、柱の一本一本まで緻密に描かれた家。
沖縄特有の微妙に狭い路地とそこから見えるベンチ。
絶妙な生活感が感じられるキッチン。
キャラクターの感情に合わせて表情を変える海原。
奥行と立体感を兼ね備えた雲と透き通るような青空。
こんな島に自分も住んでみたいと強く願ってしまったほど、本当に素晴らしい背景でした。
美術監督の空閑由美子さんは、まだそこまでアニメの仕事に多く携わってはいないようですが、今後も注目したいスタッフさんの一人になりました。
家族の暖かみ
©紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会
実央はある日突然、最愛の母を亡くします。
子供の頃、一緒にカニカマんまを食べたり、おにぎりを作ってあげたりそんな可愛らしい描写が親子の強い絆を感じさせてくれ、だからこそ亡くなったショックの大きさを強く物語っていました。
そんな意気消沈な実央に声をかけた駿。
海辺の家で、美味しい手料理をみんなで食べるという経験は実央の心を大きく変えました。
自分に対して同情ではない気持ちをかけてくれたことが嬉しくて二人の仲は一気に発展しますが、実央は一度本島の施設に入ることに。
同性愛という社会的障壁
©紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会
駿が実央のことを好きという気持ちを知ったうえで、実央は3年後再び駿の元に戻ってきます。
ところが駿は実央を突き放すような態度を取ります。
それは学生時代、駿が男の子を好きになった時、クラスメイトから気持ち悪いと言われ、そんな思いを実央に味わってほしくないという思いから来るものでした。
実央が本当に幸せになるには自分なんかを好きにならないで、普通に彼女を作った方がいい。
実央のことを愛しているからこそ、実央の幸せを一番に考えてしまう駿の気持ちは非常に切ない。
そんな駿の気持ちを受け止めたうえで、駿と一緒にいることが一番大切だ、駿が大好きだと実央は気持ちをぶつけ、二人は仲直り。
やっぱり同性愛は、社会的障壁という異性愛には存在しない壁があるからこそ、純粋で強い想いが感じられて見ているこっちもキュンキュンさせられますね。
本島で実央が相談したおかまバーの店員さんとの会話も非常に印象的でした。
幼馴染、襲来
©紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会
仲睦まじく海辺の家で暮らす駿と実央。
そこにかつて結婚の約束をした駿の幼馴染の女の子、桜子がやってきます。
駿の父親が危篤だから一度本島へ戻って欲しいと連れ戻しに来たのです。
駿は桜子との結婚間際に男性しか好きになれないからと逃走。
家族とも絶縁関係になっていたのでした。
実央は幼馴染に駿を捕られてしまいかねない状態ですが、それでも本島へ帰った方がいいと進言。
自分が最愛の母親を失ったからこそ、家族を大切にして欲しいという言葉は家族から逃げ続けていた駿の気持ちを変えるのでした。
お互いの言葉、態度がお互いに影響を与え合う二人の関係性がたまりません。
駿から一度実家へ戻ると言質を取ると、桜子も本島へ戻ることに。
いまだに駿への気持ちを手放せないでいる桜子は最後に自分にキスをしてくれたら諦めると仁王立ち。
ここのキスの描写はコミカルで桜子の可愛さを十分に表現しながら、駿と実央の想いの強さが感じられる自分も大好きな1シーンです。
本番行為
今までキスだけだった駿と実央も想いの高まりからいよいよ本番行為に。
本作を見る直前に『ギブン』を見たり、少し前には『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』を見たりなど男性同士の本番行為も見慣れたものですが、『海辺のエトランゼ』の本番描写は他作品と比較しても結構生々しかったですね。
挿れる方と挿れられる方を交代したり、
「ゴム2枚付ければ大丈夫」みたいな発言があったり、
ローションと指で穴をほぐしたり。
自分はゲイでもないし、そういう経験もないのでリアリティがあるのかどうかは一概に言えませんが、非常に丁寧な描写だったのは間違いありません。
こういうところを細かく描写してくれると、駿と実央がそれぞれ相手のことを想いやりながら気遣ってプレイしているんだなあと愛の深さを実感できますね。
興奮するとはまた違うんですが、男女のとか、女性同士のものを見るよりもいけないものを見ているソワソワ感が強くてこういう描写は他作品でもいっぱいやって欲しいと思っています。
共に実家へ
©紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会
海辺の家を去り、実家に戻ることを決意した駿。
少し実家に戻ってすぐ帰ってくるのかなと思っていたのでこの選択は結構意外でした。
駿は実央を自分の都合で引きずり回していいのか、非常に悩みますがそれでも一緒についてきて欲しいと告白。
実央は幸せいっぱいな笑顔でその告白に大きくうなずくのでした。
吹き抜ける風が実央の背中を押すような描写も、亡き母親の想いが伝わってきて思わず泣きそうに。
言葉を伝えることの大切さは描きつつも、言葉以外の部分でもたくさんの想いが表現された美しい映画でした。
「ゾッコン」
MONO NO AWARE "ゾッコン" Special Teaser 映画『海辺のエトランゼ』ver.
エンディングテーマを飾るのはMONO NO AWAREさんが歌う「ゾッコン」。
作詞作曲を手掛けるのはボーカル・ギターの玉置周啓さん。
八丈島出身のバンドという点は、離島を描いた本作にぴったりのキャスティングと言えるでしょう。
どこか南国感を感じられるロックンロールで、歌詞は駿の内心に寄り添った内容になっています。
気持ちよく韻を踏みながらも、駿のちょっとナルシストなところと実央への想いが強く表れた歌詞です。
筆舌に尽くしがたいほど
あらわしきれないこの感情も
活舌に尽くしがたいけど
あらわしてみたいのがこの僕です
出典:「ゾッコン」/ MONO NO AWARE
特にここは小説家志望という駿の設定も上手く生かしつつ、実央への感情が描かれたとても素敵な歌詞だなあと感じました。
この曲を聴くだけで『海辺のエトランゼ』の細部まで思い出せそうな非常に印象的なエンディングテーマです。
おわりに
沖縄県の島尻郡座味村といころあたりが聖地だとされている本作。
流石にこんなに美しい景色見せられたら聖地巡礼もしたくなってしまいますよね。
背景の美しさも、恋愛模様の美しさもそれぞれの相乗効果で本当に心が洗われる想いでした。
ぜひ、男性の方も食わず嫌いせずに楽しんでいただきたい作品です。
自分も聖地巡礼したくなった!
駿と実央みたいな燃えるような恋がしてみたい!
など意見や感想があればコメントしていただけると嬉しいです。
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