コンテンツの消化速度の急速化。
楽しいコンテンツが世に溢れた昨今、アニメも3話切りどころか0話切りみたいな文化も出てきているようで嘆かわしく思っている今日この頃です。
本作は、第1話からその魅力的な世界観が十分に描かれ、第2話ではその世界観が一気に覆されるという、せっかちな人にも非常に見やすい構成。
そこから毎話毎話、次回が気になりすぎて見る手が止まらない名作『デカダンス』について語っていきたいと思います。
『デカダンス』とは
HPも非常に細かいところまでこだわられているので、見たことない方はぜひHPにアクセスして見てください。
あらすじ
突如として姿を現した未知の生命体《ガドル》により、人類が滅亡の危機に陥ってから、長い年月が過ぎた。
生き残った人々は《ガドル》の脅威から身を護るため、全高3,000Mの巨大な移動要塞《デカダンス》を建造し、日々を暮らしていた。
《デカダンス》に住まうのは、日夜《ガドル》と戦う戦士たち《ギア》と、戦う力を持たない《タンカー》たち。ガドルと戦う戦士《ギア》に憧れ、自らも《ギア》になることを夢見る《タンカー》の少女・ナツメは、ある日、無愛想なデカダンスの装甲修理人・カブラギと出会う。
夢を諦めない前向きな少女と夢を諦めたリアリストの男。一見正反対のように見える二人の出会いは、やがてこの世界の未来を大きく揺るがすことになる。
スタッフ
原作:DECA-DENCE PROJECT
監督:立川 譲『デス・パレード』『モブサイコ100』
構成・脚本:瀬古浩司『終わりのセラフ』『BANANA FISH』『呪術廻戦』
キャラクターデザイン・総作画監督:栗田新一『喰霊-零-』『デス・ビリヤード』『僕らはみんな河合荘』
キャラクターコンセプトデザイン:pomodorosa
サイボーグデザイン:押山清高(スタジオドリアン)『フリップフラッパーズ』
デカダンスデザイン:シュウ浩嵩
ガドルデザイン:松浦 聖
サブキャラクターデザイン:谷口宏美 緒方歩惟
プロップデザイン:月田文律 秋篠Denforword日和(Aki Production)
ビジュアルコンセプト:村上 泉、増田哲弥
美術監督:市倉 敬
色彩設計:中村千穂
撮影監督:魚山真志
3DCGIディレクター:高橋将人
編集:神宮司由美
音楽:得田真裕『戦国BASARA Judge End』『重神機パンドーラ』『キングスレイド 意志を継ぐものたち』
音響監督:郷 文裕貴
アニメーション制作:NUT
製作:DECA-DENCE PROJECT
キャスト
カブラギ:小西克幸
ナツメ:楠木ともり
ミナト:鳥海浩輔
クレナイ:喜多村英梨
ドナテロ:小山力也
フギン:子安武人
ムニン:三石琴乃
ターキー:青山穣
マイキー:坂泰斗
フェイ:柴田芽衣
リンメイ:青山吉能
フェンネル:竹内栄治
パイプ:喜多村英梨
ジル:村瀬迪与
サルコジ:うえだゆうじ
おすすめポイント
第1話のスチームパンクな世界観とそれを第2話で覆すデジタルな世界観
本作最大の魅力と言えば、見た人全員が驚いたであろう2つの世界観。
第1話では、未知の生命体・ガドルから身を守るため、移動要塞・デカダンスの中で泥臭い作業をするタンカーと呼ばれる人たちと、命を懸けてガドルを駆逐せんとするギアと呼ばれる人たちが描かれました。
継ぎ足し継ぎ足し作っていたのであろう、ガドルから人を守ることだけを考えた様ないびつなデザインのデカダンス。
そのデカダンスの中で、明日の命のために日々働き続け、もう二度と外に出ることはできないであろうタンカー。
デカダンスの中にはおしゃれとは程遠い、生きるスペースを確保するためのような鉄の家が重なるように建ち並び、使っている食器や家具もボロボロ。
こんな世界でも希望をもって前に進み続けるナツメの姿とそれに影響されるカブラギの姿が描かれるのかなと、いわゆるスチームパンクな世界を描く作品なんだなあと第1話では期待に胸を膨らませました。
ところが、第2話で明かされた衝撃の事実。
第1話で描かれた泥臭い生活や、スチームパンクな生活も全てはゲームの中の話だったのです。
デカダンス内にいる以外の人類はいなくなり、外の世界ではサイボーグがゲームを楽しむ近未来の世界。
外の世界からサイボーグがガドルを倒して遊ぶために、ギアとなってデカダンスのフィールドにログインしていた。
このゲームの主人公はあくまで外の世界のサイボーグで、ナツメやカブラギはゲームのリアリティさを増すためのモブに過ぎないのです。
もちろんゲームなので、倒しても倒してもガドルは出現し続け、デカダンス内に住む生き残った人類・タンカーは二度と外に出ることもできない。
1話で主人公として描かれたあのリアリティ溢れるナツメとカブラギの生活が、ただのゲーム内のモブの日常に過ぎないというどんでん返しは非常に強烈なインパクトがありました。
デカダンス内の人物・小物デザインや、人々の泥臭い生活様式。
サイボーグたちの原色をふんだんに使った近未来を感じさせるデジタルなデザイン。
この2つのデザインが見事な対比関係を作っており、人類とサイボーグたちの圧倒的な世界の隔たりを感じさせてくれました。
立川監督とリアルな作品を作ってきたキャラクターデザインの栗田新一さんと、幻想的な作風が魅力なサイボーグデザインの押山清高さん。
2つの世界観でしっかりとそれぞれバラバラのスタッフを起用したことで、ストーリーの説得力が非常に強くなったと感じました。
"バグ"が諦めずに前に進み続け、周りにも影響を与えていくストーリー
ゲームの世界の中で、生きている人類が、
"自分がゲーム内のキャラクターでしかない"
と知ってしまうことは絶対に避けなければなりません。
そんなことをもし、サイボーグがアクセスしているギアに言ってしまうようなことがあれば、ゲーム『デカダンス』のリアリティさが損なわれてしまいます。
『デカダンス』を運営するサイボーグは管理を徹底し、ルールに従わないものを"バグ"として徹底的に排除します。
合言葉は、
「世界にバグは不要です。」
カブラギの正体は実はサイボーグで、かつては誰もが憧れるようなトップランカーのギアでした。
ところがとある事情から"バグ"として処分を受け、タンカーとして生き続けることを強いられ、同時に"バグ"を運営に報告する役割を担わされていました。
サイボーグのカブラギは人類とは違い、『デカダンス』がゲームであるということも、その構造に抗えないことも知っていて、誰にも話せないままずっとタンカーとして生き続けることを諦めて受け入れていました。
ナツメは生き残った人類ではあるのですが、かつて被害にあった事故で、サイボーグに埋め込まれたチップがなくなっています。
そのため、この世界の真実を知っても処分されない"バグ"なのです。
ナツメの夢は、戦士として自分自身も最前線でガドルと戦うこと。
"生きている"という実感をしっかりと持って生きていくこと。
無謀な夢に向かって真っすぐなナツメの姿に、カブラギも大きく心を動かされます。
そんなナツメのまっすぐな気持ちは、『デカダンス』の真実を知っても折れません。
その想いはカブラギへ、そしてカブラギから他の"バグ"へとどんどん伝播。
"バグ"たちが一つになった時、『デカダンス』に何が起きるのか、そのワクワクが1クールずっと止まらない本当に素敵な作品です。
ちなみに、『デカダンス』の意味は非社会的で、倦怠的な生活。
話が進むにつれて、この作品のタイトルの意味も伝わってきますね。
諦めない"バグ"の象徴であるナツメを担当する楠木ともりさんのまっすぐな演技にも要注目。
2020年の声優アワード・主演女優賞は間違いなく楠木ともりさんが獲得する
とここで断言しておきます。
話数が進めば進むほどその魅力が増していく主題歌
2020年夏クール、主題歌タイアップを3曲持つ奇跡のようなアーティストがいました。
そんなアーティストが歌うオープニングテーマは、
「Theater of Life」/ 鈴木このみ
TVアニメ『デカダンス』OPアニメ映像 鈴木このみ「Theater of Life」
作詞・作曲・編曲:ANCHOR
作詞・作曲・編曲を担当するのは、『A3!』への楽曲提供や、『地縛少年花子くん』の「No.7」で大きな話題を呼んだANCHORさん。
爽快感と疾走感がとてつもないロックナンバーに、"生きていくこと"を泥臭く歌った歌詞。
そこに魂を乗せて届けてくれる鈴木このみさんの熱い歌声も合わさって、2020年夏アニメの主題歌の中でも非常に人気が高い楽曲の1つです。
「Theater of Life」は直訳すると"人生の劇場"。
自分から動かなければ代わり映えの無い、何も起きないまま流れていくつまらない人生。
そんな人生を、傷付きながらも自分だけのかけがえのないものにしようという、泥臭くて熱い歌詞。
挑戦する全ての人の背中を押してくれる内容であり、ナツメの気持ちにもこれほどないまでにぴったり。
生きている ただその実感が欲しかった
転んだ後のこの痛みすら愛しい
傷ついても悔しくても前に進めるから
鼓動がまだだって鳴り止まない
出典:「Theater of Life」/ 鈴木このみ
特にこのフレーズは印象的で自分も大好きです。
"転んだ後のこの痛みすら愛しい"は第3話~第5話のナツメが一流の戦士になろうとカブラギと特訓を繰り返すところを強く思い出させてくれます。
オープニング以外でも、第1話や、挿入歌としての使われ方も非常に素晴らしく、早くライブで生で聴きたいなあという気持ちでいっぱいです。
この作品、立川監督の作品なので作画も非常に素晴らしく、オープニング映像だけでそのエッセンスを十分に感じ取れると思います。
ガドルとの戦いで描かれた立体的な戦闘では、スピード感はもちろんのこと、滞空時間の浮遊感も非常に感じられ、カッコいいけどカッコ良すぎない絶妙な泥臭さが戦闘でも描かれます。
この戦闘シーンがあるからこそ、デジタル世界がまた際立つんですよね。
緑色の液体・オキソンのエフェクトのカッコよさがオープニング映像では確認できますが、本編は本当に爆発のエフェクトが気持ち良い。
特に大規模な戦闘での爆発と、崩れ落ちてくる瓦礫等には要注目です。
エンディングテーマは、
「記憶の箱舟」/ 伊東歌詞太郎
TVアニメ『デカダンス』EDアニメ映像 伊東歌詞太郎「記憶の箱舟」
作詞・作曲:伊東歌詞太郎 編曲:akkin
歌唱及び作詞・作曲は「ニコニコ動画」出身の伊藤歌詞太郎さん。
編曲は、Aqua Timezさんや、LiSAさん、木村カエラさんなど幅広いアーティストの楽曲を手掛けてきたakkinさんが担当されています。
オープニングテーマとはうってかわって、優しい日常を表すようなゆったりとした曲調。
タイトルである「記憶の箱舟」の"箱舟"はまさに『デカダンス』を指す言葉で、『デカダンス』内の日常を表していることが伝わってきます。
傷付いてでもどんどん前に進めという勢い溢れるオープニングを補完してくれるような歌詞が特徴的で、今そこにある日常の暖かみを感じることが出来ます。
外に出て戦って、生きている実感を得たいナツメを表す楽曲が「Theater of Life」なら、
この楽曲はナツメの友人でナツメの夢を尊重しながら優しく見守るフェイを表しているよう。
どんな衝撃的な展開でも、この曲をエンディングで聴いて心を落ち着かせることが出来る優しい楽曲で、カラオケでぜひ歌いたい曲だなと個人的に思っています。
全然違うオープニングとエンディングの雰囲気からは、スチームパンクな世界観とデジタルな世界観の両面を持つ『デカダンス』らしさも感じられます。
おわりに
原作の無いオリジナルアニメ作品ということで、話がつまらなければ即見られなくなってしまう厳しい世界。
『デカダンス』は毎話毎話の引きも非常に素晴らしく、本当にあっという間に見終わってしまったなという印象です。
スチームパンクな世界観が好きな人、ゲームのようなデジタルな世界観が好きな人、『PSYCHO-PASS サイコパス』のような管理社会を描く作品が好きな人、色々な人が楽しめる本当に素晴らしい作品でした。
カブラギがめちゃくちゃかっこよかった!
自分はこのシーンが大好き!
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