皆さんは野球好きですか?
日本はプロ野球が非常に盛んで、子供から大人まで多くの人が野球に親しみを持っており、多くの人が細かいところはともかく、大まかなルールを理解しているかと思います。
そんな野球をモチーフにした2020年春アニメの名作、『球詠』について語っていきたいと思います。
『球詠』とは
©マウンテンプクイチ・芳文社/新越谷高校女子野球部
あらすじ
埼玉県、新越谷高校。
この春入学した武田詠深は、そこで幼なじみの山崎珠姫に再会する。中学時代、受け止められるキャッチャーがいないために鋭く変化する「魔球」を投げられず、野球への気持ちをあきらめかけていた詠深。
だが、強豪チームで実力を磨いていた珠姫は、詠深の変化球を受け止めることができた。
幼い頃の約束を果たし、再びめぐり逢った二人は、
クラスメイトの川口姉妹や仲間たちと共に停部中の野球部を復活させる。目指すは全国!
新生・新越谷高校野球部の挑戦がここから始まる――。引用元:『球詠』公式HP ストーリーより
スタッフ
原作:マウンテンプクイチ「まんがタイムきららフォワード」連載(芳文社刊)
監督:福島利規『わがまま☆フェアリー ミルモでポン!わんだほう』『MAJOR メジャー 』シリーズ
シリーズ構成:待田堂子『らき☆すた』『はるかなレシーブ』『ランウェイで笑って』
キャラクターデザイン:菊田幸一『この素晴らしい世界に祝福を!』
総作画監督、プロップデザイン:松尾真彦
美術監督:岩瀬栄治
美術設計:大平司
色彩設計:中村千穂
CG監督:後藤優一
撮影監督:久保田淳
編集:新居和弘
音楽:ビジュアルアーツ
音楽制作:エイベックス・ピクチャーズ
音響監督:森下広人
音響効果:八十正太(スワラ・プロ)
録音調整:森田祐一
録音助手:水上りおな
音響制作:叶音
企画協力:埼玉県越谷市
取材協力:叡明高等学校、越谷市民球場
モーションアクター:女子プロ野球リーグ 埼玉アストライア
アニメーション制作:studio A-CAT
製作:新越谷高校女子野球部
キャスト
武田詠深:前田佳織里
山崎珠姫:天野聡美
中村 希:野口瑠璃子
藤田 菫:橋本鞠衣
藤原理沙:永野愛理
川﨑 稜:北川里奈
川口息吹:富田美憂
岡田 怜:宮本侑芽
大村白菊:本泉莉奈
川口芳乃:白城なお
藤井杏夏:佳村はるか
おすすめポイント
人気であるが故に競合も多い、野球アニメ。
1チームに最低9人のメンバーがいないといけない関係上、1クールでそのすべてを描き切るのは非常に難しいでしょう。
新型コロナウイルスで制作も厳しい中、涙なしには見られない最高の最終回を迎えた『球詠』を3つのポイントから紹介していきます。
・女性だけの野球アニメ、他の野球アニメと差別化されたキャラの掘り下げ
・作画と3DCGが融合された野球描写
・ビジュアルアーツ、麻枝准が手掛ける青春満載の主題歌、劇伴
女性だけの野球アニメ、他の野球アニメと差別化されたキャラの掘り下げ
野球アニメと言われると、まずどんなタイトルを思い浮かべるでしょうか。
年齢層が高めな方は『巨人の星』や『ドカベン』。
ちょっと最近のアニメにはついていけていないよという方であれば『大正野球娘。』、『おおきく振りかぶって』、『メジャー』。
熱心に直近のアニメまで見ている方なら、『ダイヤのA』、『メジャーセカンド』、『八月のシンデレラナイン』あたりでしょうか。
この中で女性の野球を主眼に置いた作品は、『大正野球娘。』、『八月のシンデレラナイン』、『メジャーセカンド』、そして『球詠』。
『大正野球娘。』もとても素晴らしい作品ですが、時代観が特殊で女性の社会進出という大きなテーマがありました。
『メジャーセカンド』は、男女混合の野球ということで『大正野球娘。』と同じく、野球は基本的に男性がやるものという世界の話です。
『八月のシンデレラナイン』は、各キャラクターの可愛さや、野球をしようと思うまでの背景の掘り下げが多いキャラクターが中心のお話というイメージでした。
そんな中、『球詠』は一切の男性キャラが存在せず、かなり本格的に野球描写を重視した作品となっており、練習や試合中の心の動きがとても繊細に描かれるところが魅力な作品となっています。
特に注目して見て欲しいのが、背番号10番、白城なおさん演じるマネージャーの川口芳乃さんですね。
野球選手としての能力は残念ながら不足していますが、
マネージャーとして選手のために何ができるのか
場面に応じてどんなサインを出せばいいのか
自分の行動は本当に正しいのか
戦略が非常に大事な野球というスポーツにおいて、常に自問自答し続ける彼女の姿には心を打たれました。
各ポジションごとの責任感や、打順に応じたプレッシャー、仲間との信頼関係など、野球描写とセットになった細かい心理描写は必見です。
もちろん、真面目な部分だけでなく、シリーズ構成待田堂子さんお得意の絶妙な女性同士の友情関係の描き方も素晴らしいです。
百合百合しすぎず、本当に女子野球部でありそうなぐらいのスキンシップや会話に癒されること間違いなしです。
演技面においても、女子高生らしい若々しく、青春たっぷりな演技を楽しむことができます。
この作品が初主演の女性声優も多く、今後『球詠』声優たちがアニメシーンでどんな活躍を見せてくれるのかも非常に楽しみです。
作画と3DCGが融合された野球描写
作画崩壊と揶揄されがちな本作ですが、キャラクターの魂を見ているので別に顔が少し崩れたところで問題にならないと思っている自分。
むしろ自分は、作画と3DCGの融合が非常に素晴らしいなと感じていました。
スポーツアニメはどうしても枚数的にもカロリー的にも原画、動画の過程で制作に大きな負担がかかります。
どんな作画が良いと言われているスポーツアニメでも、ボールの軌道を描写したり、キャラクターのアップにしたりして、大事なところはしっかりと描写しつつ、いかに制作の負担を減らして違和感ない画面を作り上げていくかがカギになってきます。
そんな中、『球詠』は『劇場版 名探偵コナン』シリーズでおなじみ後藤優一さんをCG監督に置き、ふんだんにCGを使い野球描写をしています。
CGの元となるモーションアクターは女子プロ野球リーグの埼玉アストライアの方々。
キャラクターの個性を残しつつ、一挙手一投足がリアルな野球描写は非常に見ごたえがあります。
特に素晴らしいのは何と言っても「魔球」を操るメインヒロイン武田詠深さんの投球描写ですね。
デッドボールになるようなコースから首を切り落とすように鋭く曲がってストライクゾーンに入る「魔球」と、話数を増すごとに切れ味を増していくストレートの使い分けで相手打線を翻弄する武田詠深さん。
ランナーがいない時のワインドアップで投げる投球フォームは、非常に力強く踏み込んでいるよう描写されていて、バッターが打てないのも納得できる説得力があります。
逆に投球描写でCGを使わず作画で描く時もあり、太もも・お尻を中心に描き、下半身から上半身へしっかりと力が伝わっているのがわかるような描かれ方もします。
投球、打球、守備、走塁、それぞれ作画とCGが絶妙に使い分けられていて、画面に飽きがこない素晴らしい構成になっています。
ぜひ、ご覧になる際はどこがCGでどこが作画なのか注目しながら見てみてください。
ビジュアルアーツ、麻枝准が手掛ける青春満載の主題歌、劇伴
本作のBGMはゲームブランド「key」で有名なビジュアルアーツさんが担当しています。
自社ブランドの作品でしか楽曲制作を行うイメージが無かったので結構驚きました。
サウンドトラックに収録される40曲、全楽曲麻枝准さんが監修を行っているそうです。
ビジュアルアーツさんが得意とするピアノソロの静かな楽曲から、試合で攻勢の時に流れるイケイケな楽曲まで幅広い楽曲が揃っており、『球詠』を彩る非常に大切な要素になっています。
麻枝准さんについて過去に自分が熱く語った記事は2020年秋アニメ『神様になった日』の記事でもあるこちら。
そして何と言っても主題歌ですね。OPテーマは、
「Never Let You Go!」/七穂(作詞・作曲:麻枝准 編曲:MANYO)
上手く言語化できないですが麻枝准さんらしさがふんだんに詰まった楽曲です。
1番、2番共にAメロは、「〇〇こと」を繰り返し、サビは「〇〇だけ」を繰り返して非常に印象に残る歌詞とリズムになっています。
『球詠』らしい泥臭さあふれた、野球一直線な歌詞ですが、Cメロは歌詞的にもメロディ的にも大サビに向けた小休止になっていて、『球詠』の可愛らしい部分を象徴的に描いています。CメロからBメロへの繋ぎが非常にかっこいいので生バンドで聴いてみたいです。
サウンドトラックには劇中でも使われた「Never Let You Go!」のブラスバンドアレンジも収録されていますので興味のある方はぜひ聞いてみてください。
澄んだ歌声が魅力の七穂さんは、調べてもあまり情報が出てきませんでした。今後アニソンシーンでの活躍が楽しみです。
EDテーマは、
「プラスマイナスゼロの法則」/ 新越谷高校女子野球部(作詞・作曲:麻枝准 編曲:MANYO)
泥臭さ溢れるOPテーマとは対照的に、EDテーマは非常に女の子らしさも感じられて、元気がもらえるEDらしい楽曲になっています。
悪いことばかり続くなら
しばらくはいいことばかりが起きるから
プラスマイナスゼロになる
そういう仕組みなんです
引用元:「プラスマイナスゼロの法則」/ 新越谷高校女子野球部(作詞・作曲:麻枝准 編曲:MANYO)
野球のようなスポーツにおいてはもちろん、人生でも悪いことばかり続くことってありますよね。
もはや自分の選択が正しかったか、間違ってたかなんて関係なく、ただただ運が悪いとしか言いようがない、不幸なことが偏って頻発する。
もう何をやってもダメなんじゃないかと思ってしまう時、心が折れてしまいそうになるかもしれません。
『球詠』の劇中でもこういった描写が数多く見られます。
そんな時、この曲を聴けばきっと悪いことばかりじゃない、良いこともきっと起きるはずなんだと前に進む勇気がもらえるはずです。
最終回付近の梁幽館高校との試合もまさに「プラスマイナスゼロの法則」を感じられるシーンがたくさんありました。
辛くなったときはこの曲、この歌詞、『球詠』という作品を思い出して前に進む活力をもらいましょう。
CDにはOPテーマを歌う七穂さんVer.や、各選手が歌うVer.まで収録されております。個人的には富田美憂さんが演じる息吹Ver.が大好きですね。
配信情報
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少女たちの熱い青春の日々をぜひその目でお確かめください。