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【地上波放送記念】『若おかみは小学生!』テレビアニメ版と劇場版の違いは?両方とも見て欲しい理由【感想・評価】

 昨日、『若おかみは小学生!』劇場版が、NHK Eテレで5/16 15:25より放送されることが発表されましたね。

 自分も先にテレビアニメ版を見た後、劇場版を見にいって身体中の水分が全て枯れる程ボロボロ泣きました。

 今回はまだ『若おかみは小学生!』を見たことがない人、テレビアニメ版のみ見ている人、Eテレでの放送で劇場版だけ見て違いが知りたい人等にわかりやすく解説していければなと思います。

 

 

 概要

『若おかみは小学生!』とは

 令丈ヒロ子先生による児童文学シリーズです。アニメ化発表時点で300万部以上の売上がある大人気原作で、おおうちえいこ先生により漫画化もされています。

 ・第42回 日本アカデミー賞 優秀アニメーション作品賞

 ・第73回 毎日映画コンクール アニメーション映画賞

 ・プチョン国際アニメーション映画祭 長編部門 優秀賞・観客賞

 等、数々の賞を受賞した素晴らしい実績もあります。

www.waka-okami.jp


劇場版「若おかみは小学生!」予告編

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あらすじ

両親を亡くし、祖母の営む温泉旅館で若おかみ修行をすることになった小学6年生の女の子・おっこが、不思議な仲間に助けられながら少しずつ成長していく感動の物語が描かれます。

引用:映画『若おかみは小学生!』公式サイト イントロダクションより

話題になった理由

 本編の素晴らしさについては後の項で語るとして、ここまで大きく話題の作品になった理由、それは口コミによる広がりで上映初週よりも上映2週目、3週目のほうが観客動員数が増えたという超異例の興行動向を見せたことにあると思います。

 皆さんもご存じの通り、一般的な映画は上映前に大きく宣伝活動を行い、舞台挨拶を行う等して上映初週がもっとも観客動員数が多く、段々と観客動員数が下がっていくのが常です。

 この現象はSNSの普及が無ければ起こりえない現象ですし、何より『若おかみは小学生!』を見た視聴者がどうしてもこの作品を見て欲しい!と強い感動を覚えたからこそ発生した現象なのです。

  同じような興行動向をしたアニメ映画としては『この世界の片隅に』があります。2016年11月12日に公開されたこの作品は口コミによって大きく広がり、2019年12月19日まで1133日間上映され続け、日本アニメ映画史上最長のロングラン記録を打ち立てました。

 2つの作品を通して、我々は本当に質の高い作品は自分たちの手で広げていけるんだと強く実感したとともに多くのクリエイターの背中を押すことになったと思います。

 

テレビアニメ版、劇場版共通のおすすめポイント

おっこに立ちはだかる困難と成長

 若おかみになりたてのおっこは最初、接客もサービスもてんでうまくいかず失敗を繰り返します。もう若おかみなんて無理かもしれない、そう思ったこともありました。

 それでもめげない前向きなおっこは小学生にしかできない、考えの凝り固まった大人には難しい型にはまらない発想で問題を解決していきます。お客様の目線に立って、誰よりもお客様が本当に望むことを考えて実行していく姿に、心を打たれること、間違いなしです。

 春の屋には本当に多くの癖のあるお客様がいっぱい来ます。今時旅館なんて、と無理を言ってくる人もいます。それでもおっこは春の屋に住む幽霊たちと協力し、確かな成功を積み重ねてどんどんと若おかみとしての自覚を強くしていきます。

 子供の健全な成長を考えるうえでこんなにおすすめしたいアニメはそうありませんし、お子さんと一緒に作品を見た、親御さんもおっこと自分の子供を重ねてみて涙がこぼれてきてしまうかもしれません。自分がどんな父親、母親になるのが子供のためになるのか、子供と接するときに何に気を付ければいいのか、そんな悩みもこの映画を見ることで何かヒントが得られるかもしれません。

 

おっこを取り巻く人物関係のストーリー

 おっこは両親を亡くしており、春の屋には、ウリ坊、美陽ちゃんという二人の幽霊が住んでいます。この作品では非常に繊細な"死"というテーマに触れていて、"死"を悲しい、つらいものと考えるだけでなく、過去を見つめてどう捉えるかという部分が非常に大きな要素になっています。

 おっこは小学生でもあるのでもちろん小学校にも通っています。クラスメイトも非常に個性豊かなメンバーがそろっていて、旅館に関わるストーリーも恋模様も楽しむことができます。

 もちろん忘れてはいけないのが旅館に来るお客様一人一人のストーリーです。年齢も職業も性別もバラバラのお客様はそれぞれ全然違った悩みを抱えています。見ていく中でこの人の悩み、自分と全く一緒だなあと共感できる部分もきっとあるかと思います。それをおっこに助けられ、前向きに変わっていくお客様のストーリーは自分自身の人生をも前向きにしてくれることでしょう。

 

 テレビアニメ版と劇場版の違い

 結論を先に言うと違いはあれども、劇場版だけ、テレビアニメ版だけでそれぞれ1本の作品として楽しむことができます。その上で以下の内容をお読みいただければと思います。

主題 劇場版は両親の死、テレビアニメ版はおっこの成長

 劇場版は94分で1本の作品にまとめ上げるため、おっこの若おかみとしての成長を描きつつも主題である両親の死と向き合うという観点に焦点を当てています。この話がめちゃくちゃ完成度が高くて涙があふれて止まらなくなります。

 テレビアニメ版はおっこの成長や周りを取り巻くキャラクター達のストーリーを綿密に描いていきます。基本は15分で1本、1話解決のいわゆるオムニバス形式でストーリーが綴られていきます。

スタッフ

 大部分が異なります。同時期に制作していたので当然と言えば当然かもしれません。

テレビアニメ版スタッフ

監督:増原光幸、谷東
シリーズ構成:横手美智子
キャラクターデザイン:朝来昭子
美術設定:矢内京子
色彩設計:中嶋音夢、堀川佳典
美術監督:岩瀬栄治
CG監督:設楽友久
撮影監督:渡辺有正
音響監督:三間雅文
音楽:はまたけし
音楽プロデューサー:田中統英
制作プロデューサー:豊田智紀
アニメーション制作:マッドハウス
音楽制作・アニメーション制作統括:DLE

劇場版スタッフ

監督 / 絵コンテ / 演出:高坂希太郎
脚本:吉田玲子
音楽:鈴木慶一
美術設定:矢内京子
作画監督:廣田俊輔
美術監督:渡邊洋一
色彩設計:中内照美
CG監督:設楽友久
撮影監督・VFXスーパーバイザー:加藤道哉
音響監督:三間雅文
アニメーション制作:DLE、マッドハウス

 

両方とも見て欲しい理由

劇場版のおっこの成長シーン描写をテレビアニメ版で強固に補完できる

 人を成長させるもの、それはずばり経験値だと思います。「串打ち3年、割き8年、焼き一生」と言われるように試行錯誤しながら得た経験はその回数、年月分だけその人を大きく成長させます。

 劇場版でもおっこは何件かの難しい問題を試行錯誤しながら解決していくのですが、時間の尺の都合上、テレビアニメ版はより多くの問題を解決していきます。立派な若おかみとして成長していくおっこの姿はぜひ、テレビアニメ版で見届けていただきたいです。テレビアニメ版で成長を見届けることでより一層、劇場版のおっこの発言や行動に深さを感じることができ共感度も増してさらに泣けるようになること間違いありません。

 

ウリ坊、美陽ちゃん、鈴鬼を筆頭にブキャラクター達の物語の補完

 劇場版ではウリ坊と美陽ちゃん、鈴鬼の出番がそんなにありません。テレビアニメ版ではそれぞれのストーリーが描かれており、もしかすると劇場版で感じたキャラクターと印象が大きく変わるかもしれません。テレビアニメ版でそれぞれのキャラクターを深く理解したうえで劇場版を見ると新しい発見やより深い感情移入がきっとあると思います。

 キャストの面で言うと、テレビアニメ版の美陽ちゃんは日高里菜さんが、劇場版の美陽ちゃんは遠藤璃菜さんが演じられています。僕は日高里菜さんが大好きなのでキャスト変更には少しショックを受けましたが、実際劇場版を見てみるとどちらの美陽ちゃんも本当に素敵で、それぞれの美陽ちゃんというキャラクターへのアプローチの仕方も見どころになっていると感じました。

 

同じ原作を同時期にそれぞれ別のクリエイターが別の作品に仕上げた稀有な作品

 テレビアニメのリメイクでもない限り、基本的に同じ原作を同じ時期に別のクリエイターがアニメ化することはありません。リメイクするにしても10年以上は期間を開けることになると思います。思い当たるところで該当するのは『鋼の錬金術師』ぐらいでしょうか。なぜならば、ストーリーが同じなので売れない、視聴されないリスクが大きすぎるからです。

 どうしても比較され、優劣がつけられ、どちらか一方が大きな損失を被ることになりますし、もう一方にとってもわざわざ同じ原作を取り上げるメリットはありません。

 しかしながら、この作品ではそれが行われています。前述した補完関係にある部分を狙ってのことなのか、テレビアニメ版と劇場版でターゲット層が違うからなのか、理由が語られているのを見たことがないのでわかりませんが確かにそれが行われているのです。

 こんな貴重な経験、めったにできることではありません。同じ原作を読んで、別のクリエイターがどうそれを映像として落とし込んでいくのか、1本のストーリーとして何をフィーチャーするのか、アニメーション制作の醍醐味がこのテレビアニメ版と劇場版をそれぞれ見ることで味わうことができるのです。

 

 配信情報

 U-NEXT等各種見放題サービスで絶賛テレビアニメ版は配信中です。

 劇場版は見放題サービスでの配信はまだ行っていないようなので、もしテレビ放送を見逃してしまった方は都度課金制のPrime video等でレンタルするか、BD・DVDを購入して何度も見ていただければと思います。

 

おわりに

 両方とも見て欲しいというタイトルですが、とりあえず何も言わずに劇場版を見てください。この作品を知らないのは重大な機会損失です。

 今後も高い頻度で投稿していこうと思いますので良かったら毎日見に来た挙句感想や意見等コメント、Twitterでのリプライ等どんどん送ってきてくれると嬉しいです。